第21話 レイドラムとベリトの調査Ⅰ

 ナリユキ殿達には酷な事をしてしまっただろうか。いや、大丈夫だ。ランベリオンもいる事だから心配する必要は無い。


 コンコン。


「入れ」


「失礼致します」


 相変わらず二人ともいい面構えをしている。


「ハワード、シュルト。よく来てくれた」


「ハッ!」


「楽にしろ」


 ふう。前々から思っているが、もっとラフな感じでいいのだが。規律を重んじるという意味では仕方あるまいか。


「早速だが、頼みたいことがある。勿論お前たちを呼んだのは、国からの依頼と、ランベリオンから依頼だ」


「ランベリオン様から依頼ですか? それはまた珍しい」


「そうだ。この2つの依頼は共通点がある。それは、闇の商人レイドラム・ゴールウォーズが関係している」


「あの、麻薬、大麻などの様々な違法品を取り扱っているレイドラムですか?」


「そうだ。彼の調査をレンファレンス王国に依頼されていたランベリオンは、彼を追っていた。しかし、レイドラムと組んでいたベリトという魔族に不意打ちを喰らい、そのまま洗脳されてモトリーナの村を襲ってしまったようだ。モトリーナの村は食料が美味しいだろ? 私達の国もあの村には大変世話になっている。万が一に備えてモトリーナの村を警備してもらいたい。それをシュルトにお願いしたい。部下は三名程引きつれてくれ」


「かしこまりました。しかし、洗脳されたランベリオン様を誰が止めたのですか?」


「ナリユキ・タテワキ、ミク・アサギという二人の転生者だ。ナリユキ殿には神の仔の称号があった」


「神の仔!? 転生して24時間以内にランベリオン様を倒したって事ですか!? あ、有り得ない――」


「驚くだろ?」


「ですね。しかし、それだとそのナリユキ殿は相当な深手を負ったんじゃ――」


「無傷で、10分も経たないうちにやられていたらしいぞ。ランベリオンがそこの席で笑いながらそう言っていた」


 ハワードとシュルトは顔を見合わせて、まるで鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていやがる。無理も無い。200年前の戦争で、魔物をたった一つのスキルで20,000体程を消滅させたカーネル王国の英雄だ。対個人でも私や、クロノスと互角に戦えるでき、知能が高い魔物。まあ、竜族ってこともあるがな。


「まあ、そのリアクションは正しいな。私も聞いたときは吃驚を通り越して高笑いしてしまった。で、ランベリオン、ナリユキ殿、ミク殿にはカルベリアツリーのダンジョンでさらに強くなってもらっている。見たところ、アルティメットスキルも無かったからな。シュルトには悪いが部下を集めて本日中には出立してくれ。依頼難易度は多めに見積もってもBランクくらいだろう」


「かしこまりました」


「それで私の依頼はなんでしょうか?」


「ハワードには私と一緒にレイドラムの調査だ。元々はランベリオンがするべき仕事ではあったので、レンファレンス王国に行き、そこで改めて事情を説明する。そして私達が調査を引き受けるんだ」



「それは私達が行く必要はあるのでしょうか? だとしてもギルドマスターが直々に調査する必要は無いように思えますが」


「さっき、爆弾事件があったのは知っているな?」


「はい。報告は受けています」


「その爆弾事件に使われた爆弾は、C4プラスチック爆弾と言うのだが、その小型兵器はレイドラムの所有物で、民家を襲った男は、ベリトに洗脳された人間だ。そしてその根拠は、クロノスが男の過去を読み取った情報になるので、レイドラムがやったという証拠は残っているのだ」


「そうでしたか――部下を連れてきます。今すぐ向かいましょう」


「悪いな。私も準備をしておく。準備が出来次第この部屋にもう一度迎えに来てくれ」


「かしこまりました」


「では、下がってよい。シュルト、任せたぞ?」


「勿論です。何せ、モトリーナの村の食材が食べれないのは痛いですしね」


「ごもっともだな」


「では、失礼致します」


「ああ」


 ふう。行ったか。レンファレンス王国か――。馬車で行ってもカーネル王国の王都から、レンファレンス王国の王都まで一週間程かかるな。まあ、正直面倒くさいと言いたいがそうも言ってられん。


 できれば、ランベリオンの手を借りずに、今回の依頼を終わらせたいとこだが、推定難易度は恐らくSランクだ。ベリトとの戦闘を避けることはできないだろう。


 さて、準備を始めるか。

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