第14話 カーネル王国ギルド本部

 率直な意見を述べよう。デカい――。もはやどこが入り口か分からん。


「ランベリオン? ここ広さどんだけあるんだ?」


「15,000坪程らしい」


 15,000坪って大体東京ドームくらいじゃないか? どんだけデカいんだよ。


「なんでそんなに大きいんですか?」


「カーネル王国にギルドはここを含めて7つあるのだが、その本部がここだ」


 そう説明を受けながら中に入っていくが、大阪の心斎橋の商店街ばりに人いるんだけど。どうなってんの?


「俺、酒場みたいな大きさをイメージしていたんだけど」


「ここは世界で一番のギルド施設と言われている。何故ここまで大きいかと言うと、この国には王直属の兵力というものは無くてな、王直属の部隊ならあるのだが、ごく少数なのだ。で、ここのギルドがその兵力としても使われている。なので、ギルドボードの依頼内容は大きく分けて二つ。王国としての依頼か、一般人からの依頼となる。で、我等の依頼は当然一般人からの依頼となる」


「そんなに王の兵として入団できるなら、 反逆者クーデターだって紛れ込むことができるだろ」


「その心配は無い。王の直属の護衛二人がべらぼうに強い」


「ランベリオンがそう言うって事はチーターが二人いるってことか?」


「まあ、そんなところだな。二人は少し待っていてくれ。受付にギルドマスターを呼んでもらう」


「お、おう」


「お願いします」


 冗談でチーターって言ったのに意味分かるのかよ。ランベリオンって意外と博識だよな。それにしても――。


「人めちゃくちゃ多いですね」


 俺が言おうとしていたこと見事に言ってくれたミクちゃんは超能力者かな? 僕等はいつでも以心伝心ってやつね。


「そうだな」


「何か原宿みたいですよね」


「だな。俺は心斎橋みたいだなって思ったけど」


「大阪行ったこと無いんですよね――どうせならナリユキさんと一緒に行ってみたかったです」


 何言ってるこの子!? それは脈アリとして受け取ってもいいやつ? 恋愛の動画なら脈アリサインの一つとして挙げられていたけどOKなの? 分からん――。


 辺りを見渡せば、魔法使いみたいな格好した奴やら、甲冑を着たいかにも騎士みたいな奴やら、厨二臭い格好の奴やらと、まあ十人十色って感じだ。いや、俺の格好は厨二病じゃないはず。知らんけど。


「RPGゲームみたいでワクワクしますね!」


 そんな、ぐいって顔を近付けられてもさ? ああ、可愛いねってなるだけじゃん? あ、髪の毛いい匂いするわ。


「そうだな。でも、何か思っていたのと吃驚だわ。だってこのギルドの建造物って 鉄骨鉄筋コンクリート造だぜ? めちゃくちゃ勝手に木造のイメージしていたわ」


「何から何まで予想を超えてきますね。いい意味で」


「だな。でも、文化がめちゃくちゃ発達していていいもの盗めそうだ」


「バンバンパクッていきましょ」


「言い方――」


 そう言っていると、ランベリオンが近付いて来た。


「今、部屋にいるそうだ。行くぞ」


 ランベリオンがそう言うと、女性の案内人と共に俺達は連れられた。軽く10分は歩いた赤い絨毯が敷かれている左右にある二つの階段。その右側の階段を登っていく。階段の構造上、左側の階段から行っても、目的地の部屋に来れる。2.0m程の騎士のオブジェが部屋の入口を挟んでいる。


 案内人が金色のドアノブを回し扉が開かれた。


 扉を開けると10m先には、黒と金色のいかにも高そうな椅子に座っている、鎧に身を包んだ褐色肌の推定60前半の男性。銀色の髪をオールバックにしているダンディすぎるオジサンだった。いや、海外のロックスターかよって。それにオーラも凄まじい。営業していたら分かるんだけど、社長アポとかでたまに凄いオーラの人が出てくるじゃん? まさにそれなんだ。タダ者じゃないって奴だ。


「お前が頼み事とは珍しいこともあるもんだな。頭でも打ったか?」


「打ってなどおらん」


「それに客人も二人もいるとはこれはまた珍しい」


「そうなのだ。まあ順を追って説明する」


「座ってくれ」


 そう促されて、入り口から5.0mくらいのところにある椅子に腰をかけた。どうやら六人がけのテーブルらしいので、俺とミクちゃんとランベリオンは並んでが座ることができた。


「始めまして、ナリユキ・タテワキと申します」


「私はミク・アサギと申します」


 すると、ギルドマスターはランベリオンを見た。ランベリオンは頷いて、成程と声を漏らしている。え? 何なの?


「私はカーネル王国のギルド本部、第66代目ギルドマスター、アドルフ・ズラタン・ルイゼンバーンだ。宜しく頼む」


 なんか思い当たる人物の名前が色々混じってんな。頼むから違うと言ってほしいわ。割と長い名前の筈なのに、全部しっくりきて、忘れること無さそうなんだけど。


「まずは、この二人が何者なのかを説明しよう。我を10分足らずで倒した人間だ」


 すると高笑いを始めるルイゼンバーンさん。おいおい、いきなり思っていたキャラと違うし、そこはその鋭い眼光を飛ばして低い声で「なに?」って言うと思ったんだけど。


「お前が10分で負けたのか?」


「そうだ。しかも傷一つ付けることができなかった」


 と、ドヤ顔でランベリオンが言ったから、ツボったのかルイゼンバーンさんはまた高笑いするし、ミクちゃんはクスって笑っているし、最初に感じ取った緊張感返してほしいわ。


「成程。実に愉快だ。どれどれ?」


 あ、絶対に視られているわ。そうに違いない。あ、ミクちゃんも視られているな。


「神の仔を持っているから転生者で間違いないな。それに変わったユニークスキルをお持ちだ。このユニークスキルでランベリオンは倒されたのか」


「いきなり20mくらいの巨大な岩山が落ちてきたら、我も流石に無理だわな。しかも銃で両目潰さるわ、ミク殿には尻尾切られるわで、けちょんけちょんにやられたからな」


「確かに珍しい。で、なんでやられたんだ?」


「我は実はそれまで洗脳されておったのだ。それでモトリーナの村を襲ってしまった。ただ、ナリユキ殿の神のようなスキルで村は復興できた。幸い人間側の死者は出ていない」


「そもそも何で洗脳されたんだ? 一から話した後に要件を話せ」


「そうだな」


 ランベリオンはルイゼンバーンさんに、何故そんな事態を招いたのか、どういう状況でそうなったのか、今後、村にどのような事態が起きることが予測できるか、その為の防止策はどのようなアイデアか、だからギルドに力を貸してほしいという依頼を投げた。冷静に考えれば、なんだかんだランベリオンは頭がいい。それが先天的なものか、後天的なのかもか分らんが、話が簡潔にまとまっている。恐らく、依頼内容を先に言わなかったのも、敢えてだろう。普通ならば先に言うのが筋ではあるが、この二人だから成り立っているのもあるが、ランベリオンの話の組み立てが上手いと言える。長生きしつつ、人間と深い交流を持っているだけのことはある。

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