第12話 ワイバーンの棲み処

 来たのはいいが、流石に寒かった。なんで、今はコートを着て俺とミクちゃんは寒さを凌いでいる。どうやら、ランベリオンの仲間達は一つの箇所に集まっているらしい。標高3,000m地点に彼等の居場所がある。そして、近くにはなんと鉱山があるとのこと。これは色々と期待できそうだ。


 辺りはワイバーンばかりが飛んでいる。まあ、ランベリオンがいるから襲って来ないの分かっているが、ミクちゃんは少し不安そうで、俺の服をきゅっと掴んでいる。なんだこれ、可愛すぎにも程があるだろ。これはあれだ。きゅんです。


 しばらく歩いていると、空を飛んでいたワイバーンも、寝ていたであろうワイバーンも、一気に固まってお出迎えをしてくれた。100頭はいそうだ。そら怖いわな。


「ランベリオン様! ご無事でなによりです!」


 ランベリオンより少し小さい一頭のワイバーンが、そう言って頭を下げると他のワイバーンも頭を下げた。


「楽にせい」


 その言葉でワイバーン達は頭を上げて、ランベリオンの方を見ている。なんかワイバーンの視線がこっちに集中しているからちょっと怖いんだけど。


「数週間前に行方が分からなくなっておりましたので、大変心配でした」


「迷惑をかけた。申し訳ない」


「滅相もございません。で、他の者は?」


「事情があって、この人間たちが滅ぼした。我も含め、洗脳されて我達は人間達を襲ってしまったのだ。なあに、悔やむことは無い。そこにいる人間のナリユキ殿とミク殿は、我を10分もかからずに倒した猛者もさである。故に、同志達の魂はナリユキ殿の服に宿した」


「そうでしたか。彼等の犠牲は悔やまれますが、こちらから仕掛けた事なら仕方無いことです。寧ろ、ランベリオン様を正気に戻してくれて感謝致す」


 そう言ってワイバーン達は頭を下げた。何か一気に頭を下げられると、デカいペットに見えてくる。


「さっそくだが、我の友人を紹介する。男性のほうがナリユキ殿。女性のほうがミク殿だ。彼等は建国したいと言っている。それは我がもっと人間にマーズベルの良さを知ってほしいからである。故に、彼等が住みやすいよう、できる限りの事は協力してやってくれ」


「かしこまりました」


「ランベリオン、そちらの方は?」


 ランベリオンがその大きめのワイバーンを睨むと、そのワイバーンがすかさず人型化ヒューマノイドになった。身長は170後半くらいかな? ワイバーンの姿では分からなかったが、歳は結構いっているようだ。ランベリオンは人の見た目でいうと20代後半。俺とそれほど変わらないくらいであるが、このワイバーンは50代くらいの男性に見える。ところどころ皺がある渋くてダンディなオッサンって感じだ。白い手袋をしているので、執事的な立ち位置なのだろうか?


「私はジェネラル・ワイバーンのロドベルトと申します」


 そう言って一礼をされたけど、このワイバーンもジェネラル・ワイバーンなのか! どれどれ?




名前:ロドベルト

性別:♂

種族:竜族 飛竜ワイバーン種:ジェネラル・ワイバーン

称号:飛竜ワイバーンの王

勲章:☆

パッシブスキル:熱無効、熱変動耐性

アクティブスキル:地獄の炎弾ヘル・フレイム龍の咆哮ドラゴン・ブレス火炎放射フレイム・バースト灼熱の尾バーニング・テール人型化ヒューマノイド

ユニークスキル:追跡者チェイス

アルティメットスキル:火炎玉フレイムボール




「勲章あるし――てことはロドベルトもS級になるのかな?」


「そうだな」


「そうか。宜しくお願いします」


 俺とミクちゃんが頭を下げると、ロドベルトも頭を下げてくれた。


「我は、明日この二人とカーネル王国に向かう。また、ここを空けることになるが、宜しく頼む」


「仰せのままに」


「そういや、鉱山があるんだろ?」


「ちょっと案内してくれないか?」


「いいぞ。ついてくるがよい」


 ランベリオンは人型化ヒューマノイドになると、ここから2kmほど離れてた鉱山を案内してくれた。この鉱山には鉱石がいっぱいあるとのことだった。人が立ち寄ることがほとんど無いこの場所から取れる資源は珍しいモノが多いらしい。入っていくと風が冷たく寒い。


「ここはマカライト鉱石やドラグライト鉱石などが採取できる。あとはルビーやサファイアといった宝石もあったりするな。オリハルコンや、金など、全般的に採取できる。だから、金属やエネルギー資源となるものはここで全て取れるはずだ。ナリユキ殿とミク殿が好きに使ってくれてよい」


「そんな凄いところ、なんで今まで誰も手をつけなかったんだ?」


「いや、つけていたんだ。それが我と仲が良かった人間だ。しかしその人間は殺されてしまったのだ」


「そうだったのか」


「しかし、うぬ等――特にナリユキ殿は我より遥かに強い。それに頭脳明晰である。故に、この鉱山を上手く活用できるのではと期待しておる。勿論、お金にもなるので、うぬ等の腕っぷしを披露してほしい」


「まあ好意はありがたいんだけどさ。何でそこまで親切にしてくれるんだ?」


「うむ。それもそうだな。洗脳を解いてくれた事に感謝しているのと、国を造りたいっていう頭のネジが飛んだ人間は初めてだったからな。行く末を見守りたいと思ったのだ。それに人間と魔物の共存をしてほしい」


「まあ、それは元からやるつもりだったけど」


「うむ。なのでそれを見てみたいのだ」


「成程ね。仲間って事でいいのか?」


「あれ? 仲間じゃなかったのか? もはや、我は友とは思っていたのだが」


 そんな、単純なやりとりで腹を抱えて笑ってしまった。――そうか、これが仲間か。そうだよな、そんな意味が分からん質問、ミクちゃんもランベリオンもきょとんとするよな。


「何言っているですか、仲間じゃないですか」


「悪い悪い。仲間ってのは久々だったからもはや忘れていたわ。何なら、一人で生きていけるとすら思っていたから」


「ナリユキ殿、前の世界では苦労していたのだな」


 と、ランベリオンはハンカチで涙を拭っている。おい、それどこから出してきた。


「いや、どっからハンカチ出しているんですか! てかハンカチ持つんですか!?」


 ナイスなツッコミだミクちゃん。


 ズ、ズーって汚いかよ。鼻をかむな。


「と、ワイバーンギャグはここまでにして」


 なんだよワイバーンギャグって。寧ろワイバーンどころか昭和のギャグだわ。絶対転生者の友人に、コントとか見せてもらったことあるだろ。


「どうする? ここの鉱石いくつか持っていくか? カーネル王国に行けばより強力な武器などを造れるかもしれないぞ?」


「そうだな。一応もらっておく。武器や防具に最適な鉱石と金の在り処を教えてくれ」


「わかった。ついて来るがよい」


 こうして、俺達はランベリオンに鉱山を案内してもらい、必要な資源を必要数だけ調達した。正直、いっぱい持って行っても意味が無い。俺の創造主ザ・クリエイターでは、服や防具、武器といったモノを造るのはクオリティに限界があるようだ。なので、質にこだわるのであれば手作りのほうが良かったりするらしい。


 今日は、ここで家を建てて過ごし、明日カーネル王国にいよいよ出発だ。王都の文化がどんなものか見るのが楽しみ過ぎる。

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