第9話 一度目の朝
酔った。シチューやチキン、ポテトサラダと馴染み深い料理から、食べたこと無い料理も出てきた。そして楽しすぎてお酒弱いのにいっぱい飲んじゃった。でもいいのです。男の人におんぶされながら、家に帰るなんて久々だから一石二鳥です。
「ミクちゃん大丈夫か? まあ大学生らしい飲み方と言えば飲み方だけど」
「大丈夫れす――」
駄目だ。全然舌が回らない。そして、フワフワするしあっつい。
「全然大丈夫じゃないじゃん。ほら着いたぞ。もう少しでベッドに行くから」
気が付いたらもう宿に着いていた。ナリユキさんも、何気にワインやらビールやらで結構飲んでいたのに何でこんな平気なんだろ? 強いな~。
「ナリユキさんは、酔い回っていないんですか?」
「そりゃ酔っているけど、お酒抜けてきたわな」
「そうですか、強いの羨ましいです」
「少し弱い女の子のほうが可愛いじゃないか? まああくまで俺の意見だけど」
「えへへ――可愛いって言われちゃいましたね。罪ですね~」
「でも、ミクちゃんはお酒を飲み過ぎだな。よし――」
「ふぇ!? ちょっと恥ずかしいじゃないですか」
「童貞でも女の子は丁重に扱わないといけないことは知っているし、ミクちゃんがヘロヘロで仕方ないんだから我慢してくれ」
無理――。一旦おんぶから離れたと思ったら、お姫様抱っこってどんだけよ。恥ずかしくて死んじゃう――。それにベッドに下ろしてくれた時もめちゃくちゃ優しいし。え、何これ? 何プレイ?
「さてはナリユキさん。女たらしですね?」
「違うわ。隠していても意味が無いから言うから俺は童貞なんだわ」
「え!? それにしても慣れ過ぎでは!?」
「ちょっと元気になってきたな。妹がいたからな。ただ、童貞は童貞だ。つか、恥ずかしいこと何度も言わせるな。しっかり水飲んで二日酔いならないよう、明日に備えろよ? おやすみ」
「は~い」
ナリユキさんはそう言って電気を消して部屋を出ていった。ふむふむ。童貞とは思えない自然な素振りだった――まさかすぎる。あ、最近の童貞はあんな感じで自然な接し方をできるのかな? 駄目だ、何かもう色々考えていたらえっちな気分になってきた。大人しく寝よう――。
◆
「ん……」
外が明るくなっていたので思わず目が覚めた。久々にスッキリした朝を迎えた気がする。頭も痛くないしどうやらちゃんとお酒も抜けたみたいだ――。それにしてもお風呂に入らずにそのまま寝た事の背徳感が凄い。シャワー浴びないと。
昨日着ていた同じ服と下着を用意して浴室に向かった。実は、まだ入ってなかったからもの凄く楽しみだ。寝室であのクオリティならお風呂も――。
「へ?」
「え?」
凄くちょうどいいタイミングでナリユキさんが出てきた。何このベタな展開。――それに意外といい筋肉しているし――。
「お――おはようございます――」
「お、おはよう――とりあえずお風呂入れよ。俺はもう上がったし。あと、今の見なかったことにするから」
「は、はい。私も見なかったことにします」
で、とりあえず心を落ち着けて、入れ替えで湯船に浸かれたけど、会って二日目で、互いの全裸を見ることになるとは思わなかった。そして、忘れるって言ったけど多分無理だ。私が好きな筋肉の付き方をしていた――細くも無いし、筋肉がつき過ぎている訳でもない――まさに私好み――。それにアソコ大きかったし――。
「はあ――駄目だ。色々狂ってくる」
お風呂を楽しみにしていたのに、観察する気力も無いくらいナリユキさんとのラブコメみたいな展開が忘れられない。まあ、お風呂を一言でまとめると、大理石のお洒落なお風呂。浴槽も大人三人くらいは入ることができる伸び伸びとできる広さだ。
「こんな調子じゃ、私の身が持たないな。色々と――あ、ベッドで一緒に寝たら何が起きても動じない精神力がつくのでは? いや、そうだと私がヤバい人認定される。うん、確かに天然で貞操観念がヤバいのは否定しないけど。友達には計算していての行動じゃなくて天然でそれをしているから、男の子を勘違いさせるってこぴっどく怒られたし。なんだかな」
そこから私は湯船から一旦上がり、シャワーを浴びた。ここはナリユキさんが造ったお風呂。だから椅子があるのは何故か親近感が湧く。というか、この家に置いている物とか全てがナリユキさんの趣味だと思うと凄く楽しい。シャンプーやリンスは二つずつある。でも童貞なのに、女性用のシャンプーやリンス、ボディソープなんて分かるだろうか? 否、だとしたらこの透明の容器に入ったシャンプーとコンディショナーは間違いなく妹さんが使っていたものだね。そう考えていると色々と楽しい。
「ふう――」
シャワーを浴びてスッキリしたところで、鏡の前でドライヤーを使って髪を乾かしていく。この世界には無いはずの電化製品がちょくちょく出てくるの本当に面白い。普通なら風のスキルとかで乾かしていくんだけど。こうなってくるとこういった魔法みたいな力も便利だけど、死ぬ前にいた世界の電化製品やその他諸々のアイテムはやっぱり便利だったんだなって思う。
服を着替えた後、一階のリビングに向かった。すると、ナリユキさんが料理をしていた。ランベリオンさんは本を読みながら、食卓で待っているという状況なんだけど。何かシュールじゃない? ワイバーンが読書しているの何か面白い。
「ミク殿おはよう。お酒は抜けたのか?」
「ばっちり抜けましたよ。ナリユキさんもランベリオンさんもお酒強いんですね」
「まあ、
「そうでしたか。ところでランベリオンさんは何を読んでいるのですか?」
「ん? スキルについての勉強だ。色々なスキルがここに書かれているのだ」
「そうなんですね。今度私にも見せて下さい」
「勿論よいぞ。ナリユキさんお手伝いしますよ」
「もうできるから配膳してくれ」
「はーい」
で、渡されたお皿には、ベーコンとスクランブルエッグと、レタスとミニトマト。かかっているドレッシング、恐らく醤油とごま油のオリジナルドレッシングっぽい。そしてもう一つのお皿には、色々な種類のパンがあった。自炊系男子とか普通にモテそうなのに何で童貞なんだろ? よく分からないや。
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