第2話 モトリーナの村Ⅰ
「そう言えば名前を教えていませんでしたね。私はナリユキ・タテワキと申します」
「申し遅れました。私はネゴルド・ギャラバンと申します。この先にある村の村長をしております。ナリユキ様にはお礼をしたいので、私の家をご紹介させていただきます」
「優遇されるようなことはしていませんよ。私も生きるために倒しただけなので」
そう、会話を交わしながら歩いていると、わりと活気がある村に来た。ベタではあるが普通の人の中に、獣耳の獣人などが共存している。始めの村が割と穏やかなところで心底安心する。
「ここの村はどのような種族が住んでいるのですか?」
「人族と獣人族ですよ。ここのような田舎だと平穏に暮らせるのですが、王国へ行くと奴隷として売買にかけられているなんて話も耳にします。あくまで話なので確証は無いのですが」
「成程。いい村じゃないですか」
「ここが私の家です」
村の村長と言っても15坪ほどの平屋。一人暮らしなら十分広いが、家族がいるならもう少し大きい方がいい気もする。
「村長さんお帰りなさい。後ろの方は?」
家に招かれて上がったのはいいものの、村長とは似ても似つかない女性が出てきた。きめ細かい白い肌に、絹のような黒髪。いや、もうぶっちゃけた話をすると、可愛い日本人。色素が薄いのか目は茶色。黒い服を着ているのでスタイルが丸わかりなのだが、出るところは出ていて引っ込むところは引っ込んでいる、グラビアアイドルばりのスタイル。と、いうかめちゃくちゃこっち見てる。
「スーツ? もしかして日本人の方ですか?」
「ええ、そうですが」
謎の間があり、村長を完全に置いてけぼりにしている俺と女性。
「私は
「私は
「ミク様もナリユキ様も同郷の方ですか? せっかくですし上がってお話をしてください」
村長にそう言われたので、とりあえず上がって話すことにした。
「まずは本当にこの村を救ってくださってありがとうございます!」
「村長、この方は何をされたんですか?」
「グァイアスを討伐してくれました」
「へえ。それは凄いですね! 私も手こずっていたのに。ナリユキさんはどのような方法で倒したのですか? 結構素早い魔物だったと思うのですが」
「ええ――実はこうやって」
と、言われるので、仕方なくデザートイーグルを手から出した。自動で消えるのは便利だが、手の内を悟られないために、ホルスターも出して、常備をしておく必要があるかもしれない。
「凄い――銃が出てきた」
「これは王国兵の一部しか使用許可が下りていない代物ですな」
「銃はそんなに珍しいのですか?」
「そうですね。その銃であのグァイアスを倒したという事ですね? お見事です!」
めちゃくちゃ褒めてくるなこの村長。まあ、社会貢献をしたということなら悪い気はしないが――。
「鑑定してもいいですか?」
「鑑定? RPGとかでよくある鑑定士のようなスキルですか?」
「そうですよ。スーツのままなら、この世界に来て間も無いと思いますので」
「ああ」
名前:ナリユキ・タテワキ
性別:♂
種族:人族
称号:なし
勲章:なし
パッシブスキル:駆ける者、鑑定士、物理攻撃無効、狙撃手
アクティブスキル:なし
ユニークスキル:
アルティメットスキル:なし
物理攻撃無効なら、さっきグァイアスと戦った時、逃げなくても良かったのじゃないか? 駆ける者ってなに? 確かにグァイアスと戦った時、やたら走り速かったけど、もしかしたら、このパッシブスキルがあったからか?
「この
「ええ、お願いします」
「私の情報を知りたいと思いながら数秒見てくれれば、情報が目の前に映し出されるはずです」
名前:ミク・アサギ
性別:♀
種族:人族
称号:駆け出し冒険者
勲章:なし
パッシブスキル:鑑定士、熱無効、熱変動耐性、忍ぶ者
アクティブスキル:回転乱舞
ユニークスキル:
アルティメットスキル:なし
「この忍ぶ者とはなんですか?」
「これは、足音を消して移動するスキルです。なので、ほら」
そう見せてくれたのだが、言っている通り、足音が全く無かった。もはや不気味すぎる。
「成程。
「そうですよ。でも私は剣を使って戦う戦闘スタイルなので、空から一方的に攻撃することはできないんですよね」
「空の敵と戦う時と、撤退用ということですね」
「そうです」
「村長はミクさんとどのような関係ですか?」
「単純に、鳥類討伐の依頼をギルドにかけていたのです。作物が荒らされておりましたので」
「そうだったんですね」
「で、これがグァイアスのお礼となります」
そう言って渡されたのは巾着で、中には金貨1枚が入っていた。
「多くないですか?」
俺の単刀直入な意見だった。いや、そんなに苦労をしていないのに、こんなに貰っていいのか――ほら、ミクさんが俺の事ちょっと睨んでいる。止めて――そんな目で俺の事を見ないで。
「数年間、荒らされていたのでこれくらい訳ないのです」
「この村で耕す果物やお野菜は美味しいと評判らしいです。なので、王国などにも流通していて、王国の騎士が10人がかりでも倒せなかったようなのです。何といっても足が速いので、すぐに追いつかれて食べられてしまうのです」
あのイカれた顔の怪鳥そんなに強かったのか――確かに異常なくらい足は速かったもんな。まあ、俺の逃げ足がやたら速かったから、あんまり実感は無いんだけど。
「折角なので、村を見て行ってください。ミク様と同郷のようなのでお二人の方が話が弾むことでしょう」
村長の提案でミクさんと二人で村を見回ることになった。
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