【第五話】最後の関門 ③
「目にモノ見せてやる…………ッ!!」
途端────。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドォォォォォォォォオオオオオオオオ…………ッ!!
光線による爆撃で広がる白煙────。
恭司も視界が悪い状況だったが、ある程度の軌道が見えた以上、避けるのはそれほど難しくなかった。
杖の方向だけ見ておけば良いのだ。
そのまま煙の中で全て躱しきり、躱した先で、白煙の中から飛び出す。
そして…………
恭司は先頭にいる白いローブの一団に、颯爽と襲いかかった。
「な、何ィ…………ッ!?」
「ば、バカな…………ッ!!聞いていた話と違うぞッ!?何故生きているんだッ!?」
「ど、どどどど、どういうことなんだッ!?コレで終わるはずじゃなかったのかッ!?」
まさか2発とも避けられるとは想定していなかったのか、白いローブの連中は慌てふためいていた。
そもそもこんな土壇場の作戦で、カザル相手の対策など全く想定できていなかったのだろう。
ある意味、当然のことだ。
処刑当日で練達者を割いているとはいえ、無能者相手にここまで攻め込まれるなど、予想できていなくても仕方がない。
後ろの隊長クラスの兵士たちも状況に対応しようと動き出すが、前にいる彼らが邪魔で上手く前に進めずにいた。
「どけぇ、貴様らァッ!!邪魔だァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「ひ、ヒィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイ…………ッ!!そ、そう言われましても…………ッ!!い、一体どこに動けば…………ッ!!」
「貴様らの仕事は終わっただろうがッ!!ここからは我らの仕事だッ!!我らの攻撃に巻き込まれたいのかッ!!」
「そ、そんな滅相も……ッ!!アギャァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
この土壇場でそんな会話をしているくらいだ。
彼らにとっては、この二射で全てが完了しているはずだったのだろう。
恭司は悠々と、前にいる人間から順に始末していく。
慌てふためいているおかげで余裕だった。
パニックになった射撃兵たちを近接で始末することくらい、恭司にとっては造作もないことだ。
容赦なく片っ端から斬り裂いていく。
しかし…………そんな中────。
「…………ッ!!」
体が瞬時に反応した。
異常事態だ。
恭司のすぐ側で感じた異質な殺気────。
"単独"で放たれた凄まじい殺意────。
恭司は首を振ると、すぐにそちらへと目を向ける。
「く、くそオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…………ッ!!皆をよくも……ッ!!よくもッ!!この化け物がァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
見ると、白いローブを着た人間のうち、1人の男の杖が光っていた。
このカオスな状況の中、パニックになって自発的に攻撃をしようとしているのだろう。
予想外の出来事────。
だが、
恭司はそれを見ると、慌てるでも慄くでもなく…………むしろニィィイイイイイイイイイイイイイイッと、嫌らしく笑った。
好機だ。
この人が密集した状況下で、射出系の技の独自使用なんて────。
利用しない手はない。
恭司は杖から光線が発射されるより前に、素早くその男へと近づいた。
男は逆に近付いてくるなど予想外だったのか、杖が光る中、慌てふためく。
恭司にとっては、その方が好都合だ。
恭司は無駄の無い動きで一瞬にしてその男に近づくと、流れるように肩を掴む。
そして…………
男の体を、無理矢理一団の方向へと向けた。
「へ………………?」
一瞬の静寂────。
あまりに突然の出来事で、恭司以外、誰も状況が分かっていなかった。
しかし…………
状況はあっという間に動き出す。
光った杖は輝きを増すと、男の味方に向けて、それは放たれたのだ。
ドォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「き、貴様ァッ!!何をしているるるるるるるるるるるるるるるるるるッ!!」
「あ、熱いッ!!熱いイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ…………ッ!!」
兵士たちの絶叫が響き渡った。
たった1発とはいえ、ほぼ目の前でいきなり仲間が反転して攻撃してきたのだ。
誰も予想していなかったし、この混乱の中、防御することも儘ならない。
イレギュラーな事態だったが、上々の成果だ。
光線によって生じた爆発は数多の兵士たちの体を焼き、密集していたが故に散々な結果を及ぼしている。
恭司としては、笑いが止まらなかった。
「あ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!そ、そんな…………ッ!!わ、私…………わわ、わ、私は……ッ!!そ、そそそ、そんなつもりでは…………ッ!!」
光線を引き起こしたその張本人は、ぶつぶつとそんなことを呟きながら、1人狼狽えていた。
だが、
恭司は構わない。
もう用無しとばかりに即座に男の首を斬って殺すと、一団の連中に追い討ちをかけにいった。
前の方にいた奴はともかく、後ろにいた人間や端にいた人間ほど、他の人間が盾になって被害が少なかったはずだ。
まだまだ全員は死んでいない。
なら、ここから先は────。
純粋な、斬り合いの勝負だ。
「き、貴様ァ…………ッ!!この我ら『銀翼師団』を相手に…………ッ!!よくもここまでやってくれたなァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
『銀翼師団』…………というのは知らないが、彼らの部隊名だと思われた。
彼らはその男の声を皮切りに、恭司に向けて一斉に襲いかかってくる。
ここにいるのは、全員が隊長クラスだ。
おそらくは職業も『上位剣士』やそれ以上に違いない。
数は減らしたとはいえ、決して気を抜ける状況ではなかった。
むしろこれからこそが、正念場だと言っていい。
少しでも気を抜けば終わりだ。
恭司は覚悟を決めつつ、ナイフを構える。
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