第13話 英雄王
大々的に『魔王討伐』の“
それに対抗するため、魔王軍も反攻の
そして、魔王城を眼下に見据え、王と近衛長は―――
「ようやく、ここまで来ましたね……。」
「うむ……これで戦乱が収まってくれれば、それに越したことはないのだが―――な。」
「王―――?」
「私は、この機会にと軍を動かせた。
しかしそれは、単に魔王なる者を討つ事のみに
ニンゲンと魔族―――互いが憎しみ合うばかりでは、こうした種属間での戦争は、なくならないのだろうな……。」
そう―――それこそは、対抗する者への、徹底的な“殲滅”……。
老若男女を問わず、一人残らず
王は、誰に教わるまでもなく、その真理だけは心得ていたのでした。
とは言え―――敵対勢力の、事実上のトップを
ゆえに―――被害を最小限に抑える方法。
その為に―――と、明朝の作戦会議を前に……
* * * * * * * * * *
「―――なんだと?王のお姿が見えない?」
「はっ―――王の天幕に、王のお姿は見えない……とのことです。」
「(あの小娘……今になって臆病風に?)それより、近衛長はどうしたのだ?!」
「はっ―――近衛長殿は……」
なんと、この度の
ならば、王の護衛をしているはずの近衛長の行方は―――と、したところ……
「どこにも居られない―――! 私が、馬具の手入れを……と、していた時には、確かにお姿は拝見していたのに―――」
「ええい!使えんヤツめ……貴様、王の
「申し訳次第もない……係る上は今一度陣中を隈くまなく探してくる!」
全身を汗だくにし―――駆っていた馬すらも汗を乾かせないままに、馬上から王の発見未遂を報告する近衛長セシル。
それに―――あれから、果たして心を入れ替えたのか……と、思える位に改心をしたかのような宰相ゼンウの物言い……。
あの時に痛烈に批判を浴びせられたのが余程に
そして、護衛としての近衛長の失態を叱責する、その姿に……
この彼が、本当に改心をしたというのなら、国家は安泰―――益々の繁栄を約束されるのですが……―――果たして??
それに、彼らが王の事をいくら捜索しようが、見つかるはずもなかったのです。
なぜならば……王は既に―――この陣中にはいなかったのですから……
ならば……やはり―――の、「敵前逃亡」??
いえ、実は――――……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「お前が魔王だな―――……」
「貴様……ニンゲンの王! 単身でこのオレの前に立つとはいい度胸だ―――その無謀は褒めて遣わそう……そして―――死ね!」
「残念だが……お前のその要望には応えてやれない―――何故ならば魔王!滅ぶのはお前だけだからだ!!
それに……「一騎打ち」の方が、これ以上の犠牲を出さずに済むだろう……?」
「抜かせぇ~~―――小娘が!」
「≪展開≫―――≪晄楯≫!
お前の意向に沿えず、申し訳ない限りだが……私は、敗けるわけにはいかないのだ―――!!」
たった一人で、強大な敵と相対峙する王―――しかし彼女は、もう
自分の事を、誰よりも理解してくれた「友」―――
魔族とニンゲンに、それぞれ一人ずつ―――
そして……「もう一人の自分」―――
「(………)もう―――残されている時間はあまりない……だから、さっさと終わらせる! いいか……一度だけだから、よく見ておけ―――本当の、この力の使い方を!!
≪晄鎧≫!」
いつの
これは……!
こやつ……
総ての攻撃を防ぎ切る万能の『盾』と―――身体能力の向上、底上げを狙いつつ、盾とほぼ同等の防御性能を誇る『鎧』……
そして極め付けが―――鋭い雄叫びと共に、魔なる王を一刀の下に斬り伏せる、
そう―――ここに、永きに亘る魔族とニンゲンとの戦争は、一応の決着を見たのです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「皆の者―――鎮まるが良い!ここに魔の王は討ち取られた! 今ここで抵抗を止めると言うのならば、更なる生命の簒奪は行わぬと約束しよう!
さあ……剣を―――武器を棄てよ! もう戦争は終わったのだ―――!!」
突如として、鎧を
それにしても、あれは何者だ―――と、思っていたら、今朝の作戦会議に出席しなかった、王ご本人だったとは……
そう―――ここに、一応の、決着すべき処は決着しました。
……が―――果たして……これが
ぬ……ぬううう………
ま―――まさか……あの小娘が、本当に魔王を
それに魔王め……ワシにあれだけ自信を
だがまあいい……こちらも、何も考えずに従軍したわけではないのだから―――なあ?
やはり……“その者”は、ドス黒い陰謀と共に今回従軍をしていました。
それにしても、ニンゲンの政治機関の中枢に食い込みながらも、魔族に通じていた者がいたとは……
しかも―――王の身に、危険の迫る臭いを醸していたとは。
* * * * * * * * * *
とは言え―――一世一代の大事業を成し遂げた王は……
「王! お疲れさまでございます!!」
「ああ……だが、ヤツが言っていた最期の言葉が気になる―――……。
ヤツは、言っていた―――……」
『フ・フ・フ・フ……このワシを
だがな……貴様は気付いてはいまい―――
貴様……の…真の…敵―――コソ……ハ…………』
まるで―――自分達の本来の敵は、魔族そのもの―――魔王そのもの―――なのではなく……ニンゲンの
そして―――その不穏は、遅かれ早かれ的中する…………
都城への
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
近衛長であるセシルは
そしてやはり―――皆、拍手喝采をして迎え、これより先は戦乱のない平穏な世が訪れるであろうことを、
そしてその事態が発覚したのは、近衛長セシルが都に一報を
「なに……? 王が居られない??」
「はい―――ここ2・3日、その御姿が確認されていませんで……」
『おかしなことがあるモノだ―――』と、セシルは思いました。
そう、褒められ讃えられこそはすれ、もうどこにも逃げも隠れもしなくてもいいはず……なのに―――
けれど、途端に騒ぎ出す胸中―――
もしかするとこの事態は偶発的なモノではなく、
そう感じたセシルは、再度王の城へと自身が早馬を飛ばし、今回は従軍をしないで城の留守を預かっている宮廷魔術師イセリアに事の次第を話すと……
やはりイセリアの方でも悪い予感はしていたものと見え、急いで王の軍が駐屯する陣営の王自身の天幕に赴いてみるのでしたが。
悪い予感が、的中してしまった―――王の天幕に残る、
これは何者かの
しかし……イセリアは思う―――現在のニンゲンの魔術師レベルで、ここまでの事が出来る者などいない事を。
そう、この設置型罠魔術こそは、魔族の技術―――
まさか、魔王が討たれた事による報復が、既に魔族の
例え魔王とて、その実力に見合わず魔王の地位へと就き、何者かの手によって横死させられれば、『次こそは我の出番』―――と、伺う者の方が多いモノだ。
そんな
そう―――いるのだ……この軍の内部に。
一人の英雄の為した事に
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