第9話 “意識体(イデア)”不条理を知る
ある日の夜半―――既に眠りの床に就き、静やかな寝息を立てる王……
―――ところが? 快眠をしているはずの、その
「ぃよっ―――と……悪いとは思うけど、またちょっと借りるよ。」
そうした不審な言葉を遺すと、王の姿を持った者は夜の……城下へと消えて行ったのです。
しかしながらそう―――この時点で判っている事だけを申し述べれば、王リリアの身体を操作していたのは紛れもなく……
「いやあ~それにしても盲点だったよ―――この人の意識がない時に、“私”が表に出られるなんて……ね。
とは言え、こう言うのって“よくある設定”ダヨネ~~―――いいのかい、こんな安直でw」
この話しを進める為です―――我慢しなさい
「(うわぁ~お、“天の声”がぶっちゃけちっゃたよ―――ま、仕方ないけどねw)
さあ~~て、と―――今日はどんな話しを伺いましょうかね~♪」
まあ、“よくある設定”―――と、言ってしまえばそうなのですが……
そもそも、王リリアに囁きかけていた声だけのリリア―――つまりは、『
そして、ここからが本題―――つまり
* * * * * * * * * *
「よう―――やってるかい。」
「おう、お前か―――駆けつけの一杯だ、呑めよ。」
「おう―――ぷひゃ~~!やっぱ、旨うめえな!w」
「へっ―――何言ってやがる、傭兵稼業のお前は気楽なもんだろw」
「まあなw 好きな時に闘えさえすればいいんだからな。 そんなお前ら兵士は、上から命令されりゃ……」
「ああ―――例え、やりたくなくてもやらなきゃならねえ……まあその分、装備も以前から比べたら上等なモンになってきてるがな。」
「その装備―――やっぱ、この国の人達のお金……“税”てヤツから出てきてるんだろ。」
「なんだ? お前―――やけに“そう言う事”に詳しいじゃねえか。」
「おいおい―――忘れたのか?w 私は「傭兵」だ、ここだけじゃなく色んなところを回ってきてる。 嫌でも判って来る……ってなもんさ、まあ、大体どこも似たようなモンだけど―――な。」
「そう言う事か……まあ、実際今の王さんが就いてここ10年ほどで20倍に跳ね上がったって話しらしいぜ。」
この国の実情を知る必要がある―――「王」と言うのは、ただ上に立って下々の事を考えてやればいい―――が、しかし……必ずしも上に挙がってくる報告は、真実ばかりとは限らない……。
けれど―――思い知らされる現実……自分も“
それにもし―――その事を知らなければ王はただの“飾り”……ただの“傀儡”……ただの“神輿”に、成り下がって果ててしまう。
そうならない―――させない為にも、“こう言う時”に動ける自分が何とかしてやらなければならない……そして“よくある設定”―――とは思いながらも、自分が“表”へと出てこられるきっかけを知った……。
それに、特に“この
そこで
それに……またしても夜の酒場で起こる―――いや、夜の酒場だからこそでしか起こらない……
「おっ―――またおっ始ぱじめやがったな。 ま、お互い肚ん中に溜め込んでるのは多いし……な。 それにお前と出会ったのも、今から思えば懐かしい気さえしてくるってもんだ。」
「ああ―――本当に……な。」
「おっ―――また止めに行くのか。 構いやしないが、手加減してやんなよw」
想えば、
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その時の喧嘩も、その
「あんだと? 手前ぇ―――もう一度言ってみやがれ!」
「
互いに、適量以上のアルコールが体内に入っており、
次第に感情的になり、熱を帯び―――やがて“とばっちり”は……
「(!!)ああ~~~―――っ! こんの野郎共……なにしやがんだ!! ああ~~……折角の一張羅を―――喧嘩するなら、表ぇ出てから余所でやれ!」
「あ゛あ゛~~ん゛? なんだ手前え―――女のくせに、偉っそうな事抜かしてんじゃねえ!」
「あ゛あ゛ん゛?! 私が女だから……って、なんだってえ?!
ハッ―――この国は、ここ最近軍備に力入れてるって話しだから、傭兵の私でも食い扶持にありつけるものかと思いきや……お前らみたいな“クソ”な連中ばかりだと、この国の王さんも
「あ゛あ゛?! オ……オレ等を“クソ”呼ばわりしやがったな?!こんのぉ―――……」
「(……)“抜いた”な―――? お前…………
「やかましい―――!ゴタゴタ
女傭兵が頼んでいたものを飲んでいた処を、
その事に大憤慨する女傭兵―――なのでしたが、こちらでも互いがヒート・アップし、
その途端―――女傭兵の……リリアの表情が一変する……
その“イザコザ”は、元はと言えば酒の席の上での話し―――かも知れない……が、しかし、人を
それは、“その気”がなかったとしても、何らかの“
だからリリアは―――
「私は……“抜か”ないよ―――もし間違いがあったら困るからな……。 それに、お前ら程度だったらこれで十分だッ!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そしてそれは“今”に通ずる―――この酒場で起ころうとしていた喧嘩をまたしても、素手で捻じ伏せてしまっていたのですから。
「相変わらず強ぇえな、お前ぇは―――w」
「ま、喧嘩程度だったらこんなもんだろ……それにしても、治安悪いな―――皆が皆殺伐としている……。」
「まあなあ……下っ端のオレなんかが言う事じゃないが、近い内に魔族と一当てやる―――って話しだぜ。」
本当か? それは―――」
「ああ、だからこそ準備を進めてる……。 兵もまだまだ足らんから、“
そんな事……上にも
……と、言う事は何か?こいつが知らない処で話しが進んでいるのか?
それに……その話し、知らないのは王であるこいつだけなのか?
イセリアは―――?セシルは―――?
ふとした拍子で口にしたことから出てきた真実―――
この国の軍部は、王の知らない処で軍備を整え、いつでもその戦端を
しかしながら―――そう……その事を、王であるリリアは知らない……
しかもこれとよく似た「史実」を、
この事態……非常によく似ている―――私の現実世界の故郷の国が、大敗を喫した「あの大戦」の時と……
勝つ見込みすらないのに、一体どこからか湧いて出てきた“自信”で、戦争に踏み切ってしまった国―――
東洋と言う場所に浮かぶちっぽけな「島国」が、大きな「世界」を相手にして挑んだ『大戦争』―――
当初は、「奇襲」「電撃作戦」が功を奏し、世界の半分を手にすることが出来てはいましたが、そこで止めておけばいいのに調子に乗った「軍部」がそれ以上のモノを望み―――
拡大する戦域……けれど追い付かない前線への補給―――
そしてある局面での大敗を
この、大敗した大戦を引き起こした張本人たちは、皆、
あの敗戦は、一体誰が為たがための戦争だったのか―――……
師の授業でリリアはそう思いましたが、師はたった一言だけ……
『これも、戦争なんだよ―――』
どこか淋しそうだった…………
戦争の―――「争う」事の真の意味を理解していた人でさえも、そう言うしかなかった、『戦争』と言うモノの本質―――
王よ……決してあんたは間違ってやしない……
こんなにも、誰も得るものがない「争い」は全力で……断固として拒否しなくちゃならない。
こんな下らないものは、即刻止めさせるべきだ―――!
“今”自分が、ここに居る―――と、言う理由を……
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