第39話 回天之力
フィールドにて────
ラーゼの身体を乗っ取った『何か』の言葉により、辺りの者全員が更に警戒心を強めていく。
しかし警戒する反面、辺りの者達は誰も動こうとしない────
「何だ何だ逃げ惑って良いのだぞ?どうせ殺されるのだから芸を見せてみよ」
────うるせえ……動けねえんだよ!
獣人であるフリークはそんな『何か』を見つめながら逃げなければ確実に殺されると言う確信を持ちつつもその足は恐怖によって
それは周りの人物も同じである。
そして『何か』の目の前に膝をついている『
圧倒的な強者を前にした時に垣間見える人間の『弱さ』。これを見て『何か』は笑い、笑い、笑っていく────
「いいぞ
開いていた両の腕を更に開き、喜びを身体全体で表現する『何か』の行動に更に周りは恐怖を覚える。
そして、『何か』は行動を開始する────
「時間的にリューアに会いにいくのは時間の無駄だな。やはり久々に殺傷を
次の瞬間、膝をついてただ『何か』を見つめていた『
────グッ……!!!
あまりに唐突な衝撃に『
今度は背中から地面に落とす様な蹴り落としを喰らい瞬く間に『
「俺と同じ血を何故持っているのかはわからないが弱いな。血が入ってるのだからこれから俺の
「何の事だ……」
血の事や魔術の上位の存在、『魔法』について口をした『何か』に痛みを我慢しながら質問をするが『何か』は心底不思議そうな顔をして言葉を紡ぐ。
「俺の血の事を知らないのか?無礼者と
『
「そうだな、遠くの安全地帯から覗きを働く
『何か』は大きく空中に跳躍し、ラックの方を見定める────
────やばいな……
ラックはすぐさま自分の居場所がバレたと悟りスナイパーライフルを構えるが『何か』にはそんなものは
ラックによってすぐさま放たれた弾丸を『何か』はまるで
「何だよどいつもこいつも!」
ラックはすぐさま森の奥深くに入り込むが『何か』にとってそんな行動は延命処置に過ぎない。
「木々に隠れるなら木々を丸ごと消してやろう」
『何か』は空中で右腕を地面に
「我が
呪文を口にすると同時に『何か』の手の先には高濃度の魔力が溜まり始め徐々に淡い光を帯びていく。
「この身体じゃ精々出せて二十パーセントか……」
『何か』は自嘲的な言葉を浮かべながらも常人では比べる事すら
そしてその魔力は満を辞して放たれる────
「彗星魔術『
空中に星を纏う水色の光が舞う。
淡い光を空に残しながら堕ちるソレは綺麗で、美しくそして────この世の何よりも恐ろしいモノだった。
「はぁ!?何だよあれ!?」
「あんなの……どうすれば……」
フィールド地上。
フリークと和馬はその光を見て全身に冷や汗を走らせる。
どうしようも無い絶望。
どうしようも無い恐怖が汗となって身体を駆け巡る。
それは他の者も同じであり────
「何……アレ……」
女神は今にも泣き出しそうな顔で空から堕ちてくる怪しい美しさを纏った星を見ている。
星の威圧によって足が
「ハハハッ!!!さあどう足掻く!」
上で笑う『何か』を見てラックは半ば諦めた様な表情を露わにし、空を見上げる。
────あぁ、運が無いな。
そんな事を思いつつこのフィールドを焼き尽くすであろう星を見て死への覚悟を決める。
────また転生……なんて事は出来ないよなあ。
────ほんと、運が無い。
半ば隕石となって堕ちる星の熱が地面に届き始める頃。
誰もが死を覚悟し、立ち竦む中。
「死なせない!!!」
一人の少年だけが命を守ろうと動いていた。
そして星が地面に衝突する────
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