第36話 host
ラーゼの能力の発動条件は『動かない事』ではない。それはあくまで相手を動けなくした後に能力を継続させる為の能力である。
動かなくさせる為の条件は────『意識を自身に集中させる事』である。
さらに詳しく言えば止める相手は自身の半径十メートル以内にいる事が必要である。
だからこそラーゼは距離を詰める為にわざと近付いたり文句を言う風に装いながら着実に距離を詰めるなどしていたのである。
しかし、今この瞬間にそれは必要ない。
木々の隙間から抜けて来た『
すぐさま『
『呪い』の能力は神の力でも、魔術でありながらも異端の存在。
慣れている人物でないとそのトラップにすら
『
「黒魔術『カーステッド』発動」
その瞬間、突然『
────クッ……!!!
『
妖美な魔術陣は見えない壁を生み出し、中に居る者を完全に閉じ込めた。
「感知できなかったでしょ。その魔術」
『
「これから何をしようと言う訳だ?」
「さあ?ここで詳細を教える敵は漫画の世界だけだよ。僕はそんな馬鹿で
『
「あの女神が居ないことが気がかりだけど他の二人がカバーしてくれるだろう。流石に頼むよ。特に犬っころはまだろくな仕事して無いでしょ」
「誰が犬っころじゃ!」
近くで待機していたフリークがラーゼの愚痴に思わずツッコミを入れるがすぐさま思考を戦闘モードに切り替え女神の接近を許さない様に辺りに気を配り始める。
そんなフリークを視線の横に置き、ラーゼは小さなナイフを取り出し『
「今からあんたの血を貰うよ。どうせこの陣の中だとろくに動けないんだから抵抗しないで頂けると助かる」
ラーゼの言葉通り『
正確には魔術陣の中にいる時だけ異様に魔術を練ることが困難になっているのである。
武器の生成などもっての他であり、持ち前の身体の一部に魔力を集中させ常人離れした身体能力を持てる魔術を今は使用不可能であった。
さらに半径二メートル程しかない陣の為、相手のナイフを避ける事などほぼ不可能であり────
ラーゼはナイフを下から上に軽く振り上げ、『
しかし血を採取するには充分であった。
『
ラーゼはナイフについた『
「僕だけはこの魔術を使う事は無いと思ってた。人殺しなんてしたくなかったし……なんせ趣味が悪すぎるからね」
「何……?」
物騒極まりない事を呟きながらもラーゼは更にあり得ない行動を始める。
ナイフについた滴る血を自身の口の中に含んだのである。
突如、ラーゼが少し離れると魔術陣が自動解除され『
そして、音速の如く『
────何をするのかわからない以上、速攻で潰す他ない。
右の拳に魔力を溜め込み、跳躍の勢いごとラーゼに殴りかかるがその行動は不可能に終わり────
突如、『
「……何?」
その腕が初期動作となり、『
『
するとラーゼは特段微笑む訳でなく、いつも通りの何処か憂鬱な表情を顔に貼り付けながら手に持つ三十センチ程の
人形の右腕は後ろに曲げられており、まるで『
「これから起きることなんてもう想像に
ラーゼは目の前で動きを封じられている『
「もう、無理だよ」
ラーゼがその言葉と共に人形の右腕、さらに詳しく言えば右手の爪の部位に自身の手を乗せた。
────クッ……!
『
ラーゼは勢い良く爪の部位から何を摘む様に手を離した。
すると目の前の『
「グッ……!!!」
「
一つ、二つ、三つ。
少し趣向を変えて左手を。
一つ、二つ、三つ。
爪を取る事に飽きたのなら折ろう。
右手の指を一本、二本────
連続的に襲う頭に『
それを見てフリークは思わず無意識的にラーゼに言葉を漏らす。
「えげつねえな……」
右手の指が全て折り終わろうと言うところで、突如ラーゼはその手を止めた。
『
────???
その表情に『
フリークも何かラーゼに違和感を感じたのかすぐさま声をかける。
「おいどうした!」
「クソッ……クソッ……」
ラーゼは人形を睨みながらその場に膝を突き始めた始末である。
何が起こっているのか周りの二人は全く理解できていなかったが本人のラーゼが自身の身に起きた事を瞬時に理解した。
「ほんと、お前何者だよ……」
ラーゼの身体の中に取り込んだ血が
そして次の瞬間ラーゼは咳き込み、吐血を始めた────
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