第19話 Respectively
この世界に鎮座していた魔王の力。
それはこの世界に蔓延る悪性の集合体。
災害や病が集約されたもの。
そんな人間が扱っていい筈のない力が今確かに転生者の右手に魔力として宿っている。
あまりに強大な魔力の
太陽が突如として発生した黒雲により隠され辺りは一瞬にして暗く、冷たい世界に変貌を遂げた。
「これは……何が起きるんだ?」
街の人々はそんな空模様と肌に直接訴えかけてくるかつて味わっていた筈の恐怖を思い出し震える。
魔王が復活したのか……?と。
────これは世界そのものに被害を与えかねない力だから使う予定はなかったんだけど、こうなりゃもう仕方ない。
転生者は腹を括りこの行動に多少の被害が及ぼうとこの力を使う決意を固めたのだ。
魔力の流れは目に見える形に変貌し、紫色の光を帯びて転生者の周りに稲妻の様な形で纏わりついている。
転生者は未だに深い集中の底にいる。彼の集中力は『
それ故に強大な力をなるべく自身の身体に集約させて完結させている為周りに被害のようなものは今の所特になかった。
そんな転生者を見て『
────正義か……
自身は正義を振り
その意見について『
人の倫理とは多様である。
しかし、否、だからこそ。
彼はその正義を喰らう。
自身の歪に
「認めよう、貴様の
突如として『
転生者は先程の態度とは打って変わった尊重するような物言いに一瞬驚きの表情を浮かべたがそっと沈め、静かに笑った。
「僕も、あんたの正義を認めるよ。お互いの偽善をぶつけ合おうじゃないか」
「偽善か……
「ハハッ、そんなもんさ」
この時の二人の間には確かにお互いを誰よりも尊重し、されど、否、それ故に敵対すると言う奇妙な友情関係のようなものが芽生えていた。
これから殺し合う仲とは思えない、実に歪な尊重の心が────
そしてお互い一呼吸を置いた後同時に地面を蹴り上げた。二人は中心へ集束される様に向かい合いそして、ぶつかり合った。
『
二人の間には空間を歪ませる程の磁場が発生し、空間が
二人はそんな事象に目もくれずに一度拳を引いては再度ぶつけ合った。
再び空間が捩れるがそんな事は今の
何度も何度もぶつかり合い、お互いの正義を喰らう。
しかしそんな攻防を長くは持たなかった。
突如として拳を交えようとした際に転生者の魔力が
────クソッ……!
スキルは神から与えられた力であるが故に今の『
決して予想していなかった訳ではない。しかしこれ以外に目の前の怪物を倒す術は無い。
ここからは完全に力を消されるまでに倒し切るタイムアタックに切り替わったのだ。
しかし『
今しがたの転生者の魔力のブレもしっかりと感知していたし多少の表情のズレから何か思惑が変わったのでは無いかという所まで冷静に判断していた。
それでも手などは抜かない。
それが最大の尊重を示す行動だと『
そして『
転生者は一瞬何をしようとしているのか分からなくなりかけたがその頭はクリアでありクレバーである。
『
転生者の予想通り『
転生者はなんとか見切り避けるために身体を横に逸らしたのだが────
その刃は右の脇腹を抉りながら地面に突き刺さった。
転生者は確かに頭では理解していた。しかし現実とは実に残酷である。
────身体が先に壊れてきやがったな……
身体が体力の限界からか思考に追いつけなくなっていた。
しかし、それが諦める要因にはならない。
それでも転生者は右手を空に翳し、自由落下をしている『
『
────相変わらず人間辞めてんな!全く!
転生者の顔に絶望は浮かばない。
今はただ笑う。
どんな痛みに苛まれても。
「死んでたまるかぁぁぁああああ!!!」
転生者は自身の限界を悟ったのか今ある力を全て右手に集約させる。
紫色の光は荒ぶり、下手をすれば使用者本人を呑み込んでしまいそうなほど強大なものに変化を遂げる。
それを見ても『
目の前で最期の力を発する転生者に対して最後の一手を決めるべくある武器を握る。
突如として何も無い空間から弓と矢が現れたのだ。
『
────その正義、見事であった。
『
矢は赤い閃光の如く突き進み、転生者の体へ目掛けて飛んでいく。
────グッ……!
転生者は紫色の光を咄嗟に防御壁の様に展開してその矢を防ごうとする。
しかし矢は防壁に突き刺さろうと止まらない。
その壁を破るべく勢いを静止状態にも関わらず更に強めている。
しかしそんな攻防の最中、『
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