この勇者は世界を救いません

猫男爵

第1話 王命

 ヴァイセルグ城・謁見の間――。


 職人の技術の粋を尽くしたであろう豪華な作りのシャンデリア。

 磨き込まれた大理石の床の上には踏むことさえ躊躇われるほどの芸術的なまでの刺繍が施された厚手の絨毯。

 そんな絨毯が伸びる先には、これまた金や宝石をふんだんに取り込んだ装飾はもとより――。そのこの世のあらゆる富と権力を象徴するかのような豪奢ごうしゃな玉座に腰を下ろすは、この空間において唯一無二の存在にして偉大なるこの国の王、シャルディール13世であった。


 そんな王が見つめる先には警護の衛兵たちと一人の少年の姿があった――。


 静寂に包まれ、シーンと静まり返る空間を打ち破るかの如く、齢60を超えて尚衰えを知らない鋭い眼光とともに王が口を開いていく――。


「ヴァイセルグ王シャルディール13世が命じる、勇者ガーネットよっ、お主の身命を賭して必ずや、必ずや魔王を倒してまいれっ‼」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る