【居魚屋 魚~私の神】
KAC20224 お題 お笑い、コメディ
人生に疲れ果て、命を絶ってしまおうと樹海にやってきたえりかとひろみ。この辺りに似つかわしくない飲食店を見つけて最後の晩餐をとる事にした。一風変わった店の店主と店員と話すうちに次第に心の変化が…
初めて書く感じの表現方法に
悪戦苦闘しました。
読み苦しい部分あるかと思います…。
~~~~~~~~~~~~~~~
「ひろみ、もうすぐだね。」
「えりか、本当にいいの?別に私、
怖くなったわけじゃないからね?」
ひろみの言葉を聞き、黙って頷いた。
二人沈黙のまま、木々に囲まれた真っ暗な夜道を目的の場所に向かって歩いていると突如、この場所には似つかわしくない明るいネオンのようなものが見えた。
「ん?なんでこんな森の中に
明るい建物が?ここ…飲食店…?」
「なんか、そうみたいね。なんて読むんだろこの店…”居魚家 魚~私の神”?いざかや…さかな…わたしのかみ…?聞いたことないしチェーン店では無いよね、変な名前ー」
「なんか…私少しお腹空いてきたかも。
えりかはどう?」
「んー確かに…よし、最後の晩餐といきますか!なんか、変な名前だけど多分魚料理の店だよねきっとー。お刺身大好き~♪」
”ガラガラガラ”
建付けの悪い扉を開け中に入ると、聞いた事の無いような昭和歌謡?と言った感じの音楽が響き渡っていたが、店内は照明が特別明るいといった感じでもないのに、哀愁漂う音楽なんてここには関係ない!と言わんばかりに明るい雰囲気に包まれている。
店員
へぃ!いらっしゃい!!
いざかや、うぉ~マイゴッドへようこそ~♪
何名様でございやすか?いや、違うな…
何名様でございますか~?
えりか
ぎゃはは!!いきなり何?ございやすか?
ってー!?ヤバい!ツボったーー!!
店員
ツボった?ツボ…早速のご注文
ありがとうございやす~♪
親方~?こちらの綺麗なお嬢さん方が、サザエのツボ焼きを食べたいみたいでやんす!
親方
サザエのツボ焼きだとー?そんな事より、呑み助!お嬢さん方を席に案内するのが先じゃねーのか?このバカたれが!!
店員
お!いけねぇ~大切な事を忘れてやんした。すいやせん、こちらの席にどうぞ~♪
ひろみ
ぎゃはは!!ちょっとちょっとーなんなの
この店ー?いちいち面白いんだけど!
店員
すいやせん、久方ぶりの、お客人なもんで~
舞い上がってしまいやした!舞うのは踊りだけに、しろい!って感じですな!
あれ?ここ笑うところですよ?
ってしまった!お客人と喋りすぎると親方に
叱られちゃいますわ。どうぞー、つまらないモノでやんすが、そのキレイなお手手をこれで拭いてやってくだんなさい。
そう言い残し、呑み助と呼ばれていた
騒がしい店員は奥に引っ込んでしまった。
目を合わせる二人…
えりか
この店、なんなの?面白いけど、なんか訳の分からない言葉使いしてない?お客も私たちだけみたいだし、怪しさ満点なんですけど!
ひろみ
本当、時代劇に出てくる人みたいな話し方だよね?…私さー、えりかに言ってなかったんだけど、この場所調べてる時に変な都市伝説みたいなサイトが出てきたのよ。そこに、この樹海の近くには死のうとしている人間が近づくとボケとツッコミを一人でする伝説の居酒屋店員がいる変な飲食店が現れる?みたいなこと書いてたんだよね。
えりか
えっ!!その話本当なの?!確かに…
そうだけどさ…てか怖いんですけど!
続けて口を開こうとした時、先程の騒がしい店員が何かを持って戻ってきた。
店員
改めまして、いざかや魚を、”うぉ~”と読み私は”まい”神は”がっ!”がっ!は言わずもがな、ゴッド…そう、うぉ~まいごっどへ、
ようこそおいでくださいやした~!
これは、先程ご注文のサザエの壷焼きでございやす~。あ!これはご無礼を働いてしまったお詫びに店から奉仕させてもらいやすんで、じっくり堪能しておくんなまし~!
えりか
ぎゃはは!なんて読むんかと思ったら…
うぉ~まいごっど!!何なのこのセンス~
ひろみヤバい!!あたし、我慢できないわ!ちょっと呟いてもいいかなー!?
ひろみ
あたしも思ってた!やろーやろーって
なに!!ここ圏外じゃん!!
どういうこと?この国に圏外の場所なんて
あるの?もーー今やりたかったのにーー
店員
おや?お嬢さん方、それはなんですか?おいらにはよくわからないですけど、折角の壷焼きが冷めちまいやすぜ!そんなものしまって食事を楽しんでくだせー!!
ひろみ
そうね、使えないものを持っていても意味はないわね。貴方の名前はえぇーっと…
呑み助だったわね?よーし、呑み助!冷えた生ビールを急いで二つよろしく!後、お刺身盛り合わせもお願いね!
呑み助
あいよ~!!親方~刺身盛り合わせ一丁おねげーしやす!あ、お嬢さん方。栄螺のタレが手についてしまっちゃ綺麗なお手手が汚れてしまいやす!つまらないものですがこれでお手手を拭いてやってくだせー!
ひろみ
ちょっとちょっとー?つまらないモノで、
私達の綺麗なお手手を拭けっての?
えりか
そうよそうよ!私達のキレイなお手手が
ますます汚れちまいやすぜ?
ぎゃはは!ひろみ最高~!!
呑み助
いやー参った!ここは一本取られましたわ!お嬢さん方も中々の腕前ですなー!!
親方
おぉ~い!呑み助!刺身盛り合わせできてるぞー?いつまで客人の所で油売ってるんだい!油を売るのはガソリンスタンドって決まってんだ!ここは海鮮居魚屋でぃ!
呑み助
親方~今のは栃木の街でやんす。
今市!イマイチでやんす~
親方
お前に言われちゃー名古屋だな!
呑み助
名古屋?親方、名古屋って?
その心は?
親方
尾張名古屋は城でもつ。
終わりだってーんだよ!
このアンポンタンが!
ひろみ
えりか~ヤバい!全く意味わかんないけど
多分この二人、神だわ!
呑み助
お嬢さん方にはちょいと難しかったでやんすかね?よし、ここで一つ頭ならしの簡単な謎掛けをお披露目いたしやしょう!
おいらの仕事と掛けまして、
出世魚と、ときます。その心は?
ひろみ
えー?何?さっきのイマイチみたいに
考えるのよね?えりか、わかる?
えりか
えぇ?出世魚って大きくなるに連れて
名前変わっていく魚だよね?
んーーわかんない!!
呑み助
その心は…
まだまだ"ブリ"にはなれません。
いやー我ながらうまい!!
ひろみ
え?なんでブリなの?
なにが上手いの??全然わかんない!
えりか
……、あ、わかったかも!
ブリって漢字にすると魚へんに
師匠の師って書くじゃん!
まだ親方にはなれないって事じゃない?
ひろみ
……えりか凄い!!
呑み助
いや~お見逸れしやした!!
流石は若いお嬢さん、頭の回転が早い!
ひろみ
……回転遅くて悪かったわね!
呑み助
い、いや~、そ、そういことではなくて!
客人に答えられるなんておいら、夢にも思っていやせんでした!おっと、こりゃあいけない!親方がご立腹だ!ちょいと失礼しやすぜぃ!
呑み助は逃げるように奥へと引っ込み
暫くすると親方と共に再び現れた。
親方
いやー、お嬢さん方。この呑み助が数々の失礼を働き申し訳ねぇ限りです。本当お前は、豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ!!
呑み助
そんな~まだ鰤にもなっていないおいらに向かって、豆腐の角に頭をぶつけろだなんていくら親方でもあんまりでやんす!!
しくしく…
えりか
豆腐の角に頭ぶつけて…ってくだり
どこかで聞いた事あるわね。
んーなんだっけなー?ひろみ知らない?
ひろみ
あたしもある気がする…
……あ、あれだわ。死神…
親方
おやおや、お嬢さん方も死神をご存知でしたか。いやーあの話は奥が深い物でしてね?
正月など目出度い席で披露する時は結末を変えて縁起の良い締め方をする噺家もいる程です。あっしの考えとしましては…人間には人間毎に全うしなきゃならねー寿命がきちんと決められてありまして、死を司る死神にも寿命はあるんじゃねーかと思っていやす。あなた方お二人にも全うしなきゃならねー寿命ってのがあって、それを自分で断ってしまうって事はやっぱりやっちゃーいけないことだとあっしは思うんです。勿論あっし達はあなた方にとっちゃー何の関わりもないタダのしがない料理屋店主とお客人ってことですがね?でも、お二人は呑み助のくだらない話を聞いて大笑いし、料理を美味しく嗜んでくれた。色んな悩みを抱えてるかもしれねぇがもう少しだけ生きてみてはくれやせんか?
呑み助
う、う、うぉーーーー!!
親方はやはり最高っす~ぐすん。
俯いて下を向く二人。
ひろみ
…えりか?あたし死ぬのやめる。
美味しいお酒と親方の料理食べてさ半分以上聞き取れない、呑み助の話聞いて笑って…
なんか死ぬの馬鹿らしくなってきちゃった。
えりか
うん、あたしも同じこと考えてた。
まだまだこの世界には、辛いことだけじゃなくてあたし達の知らない楽しい事も沢山あるんだよねきっと。
親方
おぉ!そうこなくっちゃ!!よーし、お嬢さん達が思い留まってくれたお祝いだ、今日は好きなだけ食ってくれ!こいつの給料から引いておくからな!
呑み助
親方~!それはあんまりでやんす!!
…………………
”お客さん、お客さん起きてください!
終点ですよ!!”
肩を揺さぶられる感覚で目を覚ます。
あれ?あたしは確かひろみと居酒屋みたいな
ところに居たはず…電車を降り過ごし眠りこけていたのか?
「すみません、すぐ降ります。
あの~ここは何処ですか?」
”ここ?ここは栃木の今市ですけど”
二人
「ぎゃはは!イマイチ!!」
おあとがよろしいようで~
[完]
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