第48話 女友達はいつでも好きにヤらせてくれるのに

 今日の葉月のパンツは、久しぶりの黒だった。


 昨夜は湊は普通に自宅で寝て、葉月も同じだったが――

 もちろん、葉月は湊の父親が出勤した時間を見計らって、湊家にやってきた。


 いつもどおり、リビングで二回ほどヤらせてもらい、一回は途中までは着けて、最後の最後で外しただけだった。


 二回目に至っては、最後は葉月の口で終了。


「ふーん……一回だけだと、そんなに多くないね」


 たっぷりでなければ、満足できなくなっているらしい。


 もちろん、湊としてもこれだけでは満足できないが――あまり調子に乗りすぎるのもまずい。


 その際に、もちろん葉月のパンツもブラジャーも見ていて、色っぽい黒だった。

 五人の女友達で、黒が一番似合うのは葉月だろう。


 意外と、つるぺたな茜も似合うのだが、彼女はあまり下着にこだわらない。

 まるで小学生のような下着ばかりで、それが似合ってはいるのだが。

 いや、小学生の下着を見たことがあるわけではないのだが。


 そんないつも通りの朝を過ごして、二人は登校。

 何事もなく昼休みになり――


「なんだ、湊。今日は瀬里奈さんとメシじゃないのか?」

「あいつにも友達付き合いがあるんだよ」


 湊は、男友達数人と昼食をとっている。

 弁当は瀬里奈が休み時間にこっそり渡してくれたものだ。


 ついでにそのときに、ちらっとパンツも見せてもらっている。

 瀬里奈のデフォと言える清楚な白だった。


 だだパンツを見せるだけでエロすぎて、どこか物陰に瀬里奈を引っ張り込んで一回だけでもヤりたかったが、なんとかこらえた。


「きょ、今日は放課後まで……我慢しますね♡」


 瀬里奈もそんなことを言っていたので、ヤりたいのは彼女も同じだったらしい。


 今日は女友達との予定では、夜に葉月と遊ぶのは確定として。


 放課後は瀬里奈がOKだが、茜と朝日の生徒会組も途中参加できるらしい。

 ひぃなは姉が行くならボクも、とのことだった。


 生徒会組とひぃなは、誰が行くか湊に決めてほしいとのことだった。


 これは組み合わせが悩ましいところだ。


 瀬里奈と茜のお嬢様・おっぱい控えめ組の二人か。

 あるいは、瀬里奈に双子のHカップを加えてたっぷり楽しんでもいい。


 贅沢すぎる悩みだが、真剣に考えて決めるべき問題だ。


 いや、もうどうせなら葉月以外の四人全員にヤらせてもらうのも――


「ね、トシヤ。ちょっといい?」

「え? 梓?」


 弁当を食べ終え、放課後の予定を検討しつつ友人たちの話に上の空で参加しているところだった。


 梓が現われ、湊の肩をぽんと叩いてきた。


「なんだ?」

「ここじゃ、ちょっと。外、出られる?」

「ああ」


 友人たちに目で合図して、湊は立ち上がる。


 これが葉月や瀬里奈だったら、友人たちに羨ましそうな、あるいは殺したそうな目で見られる。


 友人たちが特に気にした様子もないのは、それだけ梓が気楽に付き合える女子だからだろう。


 梓は先に立って歩いて行き、階段を上がっていく。


 葉月と同じくらい短いスカートがひらひらと揺れ、白い太ももが見える。

 さすがにパンツは見えない……というより、中になにかはいているだろう。


「なんだ、屋上か」

「そ、今日は天気もいいし」


 とはいえ、昼休みももうすぐ終わりで、生徒の数はほんの数人だった。

 梓はフェンスのそばまで歩いて行って、湊のほうを向いた。


「結局、瀬里奈さんとはどうなの? この前訊いたときは、なんかごまかされたけど」

「……いきなりだな」


 あくまでお芝居なので、湊は肯定も否定もできない。

 作戦終了なので、これ以上話を広げるのも避けたいところだ。


「ま、答えられないならいいけど」

「いいのかよ」


「これは前フリってヤツ。トシヤが誰と付き合っても、私がどうこう言うことじゃないし」

「……そうだな」


 一度告白した相手に、関係ないと言われるのも少し辛かった。


「それで、本題はなんだ? もう時間ねぇぞ」


「なんていうか……ほら、この前トシヤ、頭おかしいこと言ってたよね?」

「頭おかしい? 俺なんておかしいところすらない、普通のヤツだぞ」


「私もそう思ってたけど……違うんじゃないかとも思うんだよね」

「どういうところが……?」


 湊は、これも真剣に考えてみたが、特に思い当たるところがない。

 交友関係は少し変わっているかもしれないが、自分自身はごく平凡だ。


「どういうところか……よくわかんないけど、あのときはまだ普通のヤツで、それから変わった気がするんだよね」

「ふわっとした話だな」


 あのとき、というのは湊が告ったときのことだろう。

 確かに、湊は梓に告白したときときは少し違う自覚がある。


 葉月という女友達ができて、それから四人にまで増えた。

 これで変わらないほうが難しいだろう。


「それでさ……パ、パンツ見たいの?」

「は?」


「は、じゃない。見たいのか見たくないのか訊いてんの!」

「な、なんだ、その勢いは……」


 梓は顔を真っ赤にして、むーっと湊を睨んできている。


「……男子高校生で、女子のパンツを見たくない奴はいないだろ」

「そういう一般論の話でもない」

「畳みかけてくるな……俺は、そりゃ……見たい」


 なんて馬鹿な会話だろう、と湊は頭痛がしてきた。


「じゃあ……ちょ、ちょっとそこに立ってて」

「ん?」


 梓は周りを確認して、湊を盾にするような位置に立つ。

 それから、スカートの中に手を突っ込み――するりと黒い布きれを取り出した。


「スパッツはいてるから。スパッツじゃダメでしょ?」

「な、なにしてるんだ、梓?」


 湊がそう言ったのと同時に予鈴が鳴った。

 屋上に残っていた数人の生徒が、みんな引き上げていく。


「ちょ、ちょうどいいタイミングだったね」

「おい、梓……おまえ、まさか……」


「ち、違うからね? トシヤにパンツを見せようっていうんじゃないから」

「そ、そうなのか」


 もしかして、梓のパンツを見せてもらえるのか――と少しだけ期待してしまった。

 やはり、友達でもない女子のパンツが見られるほど甘くないようだ。


「さすがにパンツ見せるのは、トシヤが相手でも恥ずかしいからさ……」

「だ、だよなあ」


「けど、写真なら撮ってもいいよ」

「……写真?」


「スマホは持ってんでしょ、トシヤ」

「ああ、そりゃ持ってるよ」


 湊はスマホを肌身離さず持っているタイプだ。


「直では見せられないけど、スカートの中にスマホ入れて撮ってもいいよ……」

「……なんか盗撮っぽくねぇ?」


 そんな姿、他人に見られたら人生が終わりかねない。


「本人がいいって言ってんだから、犯罪でもなんでもないでしょ。ほら、証拠も送っとくから」

「ん?」


 湊のスマホにメッセージが着信。

 確認すると――


「“私、梓琴音は湊寿也にスカートの中をスマホで撮影することを許可します”……って、おい、梓?」


「これで騙してるとか、罠とかじゃないのもわかったでしょ。ほら……どうぞ、トシヤ」

「で、でもなあ」


 わざわざ文書にしておくとは。

 梓もクソ真面目というか、ズレているというか、変わった女子のようだ。


「人が一大決心して言ってるんだから、撮って! 何枚でも撮っていいし、使い道も気にしないから!」

「使い道って……」


 梓の勢いに押され、湊は彼女のスカートの中にスマホを入れる。


「んっ……♡」

「へ、変な声出すなよ……」


「だ、だって……痴漢みたいだし♡」

「梓がやれって言ったんじゃねぇか!」


「わ、わかってるって。いいから撮って!」

「…………」


 湊はさらにスカートの中に手を入れ、あらかじめ確認してあった撮影ボタンを何度か押す。


 それから、スカートから手を出して、写真アプリを開き――


「うわ、けっこうちゃんと写るもんだな……」


 今時のスマホのカメラ機能は凄いものがある。


 スカートの中が、想像以上にくっきりと写っていた。

 適度にむちっとした太ももと、その上にある白いパンツのシワまではっきりわかる。


 パンツからはみ出した尻の肉もぷりんと柔らかそうだ。


「うおお……これが梓のパンツか……」

「あ、あんまりじっと見ないでよ……」


「……使い道は好きにしていいって言わなかったか?」

「そ、そうだった……でも、これが限界! 普通にパンツ見せるとか……み、見たいの?」


「ちょっと待て。限界じゃないのか?」


 これではまるで、生パンツも見せてもらえる流れになりそうだ。

 湊は女友達に頼み込んでパンツを見せてもらってきたが、強制するつもりはまったくない。


「なんか、ここまでしたら生で見せても同じことかなって……ど、どうなのよ?」

「そ、それは……」


「はい、そこまで。馬鹿なことやってんじゃないの」


「は、葉月!?」

「葉月さん、なんでいるの!?」


「一応、そこの男は友達だから。屋上に行ってるの見えて、ちょっと気になっただけ。そしたら、まさか盗撮犯になるとは……」


「ちげぇって! 見てたなら、勝手に撮ったんじゃないのはわかってんだろ!?」


「ばーか、冗談だってば。湊に女の子のスカートの中、盗撮する度胸なんてないよね」

「……微妙だが、そのとおりだな」


 たとえ女友達のパンツだろうと、勝手に撮ったりはしない。


「梓、あんたも馬鹿やってんじゃないの」

「……葉月さんには関係なくない?」


「さっき言ったじゃん、湊は友達だって」

「私も……トシヤは友達だよ。たぶん、友達になったの、葉月さんより先だよ」


「先とか一番とか二番とか、友達にそんなもん関係なくない?」

「お、おい、葉月、梓、ちょっと落ち着け。なんでいきなり揉めてんだ?」


 湊が慌てて、険悪な二人の間に割って入る。


「ほら、湊♡」

「うおっ!?」


 突然、葉月がぴらりとスカートをめくって見せた。

 今朝も見た、黒のパンツがあらわになる。


「は、葉月さん!? あなた、なにしてんの!?」

「あたしは湊の友達だから。頼まれたら、パンツくらい見せられるし。スマホで撮らせるとか、中途半端なことじゃなくてね」


「わ、私もトシヤになら――」


 梓は、スカートの裾を掴んですすっと引き上げていき――


 ギリギリのところで、ぴたりと梓の手が止まってしまう。


「う、うう……やっぱりダメかも……」

「お、おい、梓。それなら無理にしなくても……」


「トシヤは友達だと、思う。でも……友達だから……トシヤとは付き合えないし、パンツ見せるなんて……できない!」


 そう叫ぶと、梓はぱっとスカートの裾を戻して。

 小走りに屋上から出ていってしまう。


「…………これが普通だよな」

「あたしが、ちょっと意地悪しすぎちゃったかも。というか……」


 葉月は湊の前に立ち、顔を覗き込んでくる。


「湊、大丈夫? なんか、顔色悪いけど?」

「……そうか?」


 湊は、意味もなく自分の顔を撫でてみてから。


「そうだな……なんていうか、またフられたみたいなもんだよな」

「そ、それは違くない? 別に、湊はまた告ったわけじゃないじゃん」


「そう思いたいんだけどな……」


 湊が今襲われているのは、一年ほど前にも味わった胸の痛みと同じ――


 いや、あるいは最初に梓に告白を断られたとき以上かもしれない。


 告白を断られても、梓のほうは友達だと思ってくれていた。

 だが、湊は自分が梓のことを友達だと思えていたか――


 少なくとも、今は。


 今は、梓に完全に拒絶されたかのような――


「あのさ、湊? どうせ、次の授業、間に合わないよね?」

「あ、ああ。そうだな」


 湊は、はっとなって我に返る。

 葉月が湊の胸に手を置き、豊かな胸を押し当ててきていた。


「どうせ間に合わないなら……ちょ、ちょっとだけヤらせてあげようか?」

「…………」


 湊は、そのまま手を伸ばして葉月の細い身体を抱きしめたい衝動に駆られる。


 だが――

 なぜか、このとき湊は――


 いつもなら当たり前のようにしていたことが、どうしてもできそうになかった。



「んっ、湊くん……もっとちゅーしますか?」

「あ、ああ」


「ダメダメ、今度はあたし。ほら、湊……舌吸って♡」


 屋上に、二人の女子の甘い声が響いている。


 湊は片手で葉月を抱き、もう一方の手で瀬里奈を抱いている。

 二人と交互に唇を重ね、舌を絡め、むさぼるようにキスを続けていく。


「瀬里奈はいいのか? 優等生なのに、授業サボっちまって」

「は、はい。お二人が戻ってこなかったのが、心配で……」


 そう、梓が去ったあと、入れ替わりに瀬里奈が屋上に上がってきたのだ。


 湊は葉月を抱きしめることを躊躇してしまったが、瀬里奈も来たので二人の唇を味わうことは止められなかった。


 ただ――


「……やっぱ、変じゃない、湊?」

「そ、そうですよね」


 葉月と瀬里奈が、首を傾げている。


「いつもなら、とっくに『ヤらせてくれ』って一回は出してるところなのに」

「ど、どうしたんですか? 私はいつでも着けずにそのままで……いいですよ?」


 二人の少女は、さらにスカートを持ち上げて。

 葉月の黒パンツ、瀬里奈の白パンツがちらりと見えてくる。


「ああ、ヤりたい……凄くヤらせてもらいたんだけどな……」


 湊は二人のパンツを凝視しつつも、そこに手が伸びていかない。


「葉月、瀬里奈、悪い」


 湊は葉月と瀬里奈の手を取って、その手を下げさせる。

 持ち上げていたスカートの裾も下がり、パンツと白い太ももが隠れてしまう。


 さらに、湊は二人のブラジャーも元に戻す。


「今日はおっぱいもパンツもいいし……ヤらせてくれとは言わない」


「「えっ…………!?」」


 葉月と瀬里奈、二人の女友達が同時に驚いた声を上げる。


「どうしても、二人とヤれそうにない。どうしたんだろうな、俺は」


「み、湊、あんたさっき梓に逃げられたせいで……?」

「もしかして、湊くん……」


「ああ……」


 頼めばヤらせてくれる女友達がいる。


 しかも、目の前にいる二人の美少女に加えて、今や他に三人もいる。

 茜も朝日もひぃなも、今呼べばすぐに来て、おっぱいを見せてくれてパンツを脱いでくれるだろう。


 湊が着けずにそのまま、と言えば「しょうがないわね「しょうがないなあ」「しょうがないですね」と呆れながら、ヤらせてくれるはずだ。


 それでも、五人の美少女にヤらせてくれと頼む気持ちになれない。


 いや、ヤりたい気持ちがないわけではないのに、身体がその気になっていない。


「葉月、瀬里奈……勝手ばかりで悪い。ヤらせてくれなくていい」


「マ、マジで言ってんの……? あたしとヤりたくないの……?」

「湊くん、私ならいつでもいいのに……どうしたんですか……?」


 ヤりたいし、どうしたのかと訊かれても答えられない。


 湊は頼めばヤらせてくれる女友達との関係を、これからどうしていけばいいのか。


 なによりも大事な少女たちとの未来が、今はまるで見えない――

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