第5夜 夢の中へ
fallの横の全自動車イスに座るコウ。
車イスの横に掛けてあるマイク付きヘッドセットを頭に装着した。
夢に入っている間は眠ってはいるが耳は機能しているので、これでシュウ博士の声は聞こえる。
「あーテストーテステスー聞こえるかぁー?」
「そんなにテステス言わなくてもよく聞こえてますよ」
「ん、OKだ。しっかり装着確認したか?」
「大丈夫ですって、確認しました」
「一応、イヤホン兼安全装置なんだからバカみたいにしっかりみとけよ?途中で外れでもしたら俺の声は聞こえないし、安全装置と切り離されてヤバイ状況になった時に脳に直接ダメージくるのはお前なんだからな?」
子どもに言い聞かせるように何度も言わなくてもわかっていると頬を膨らませるコウ。
膨れっ面のコウにお構いなしにモニターを起動し、着々と夢にはいる準備を整える。
fallからブゥンと静かに機械音がしだした。
コードを何本も繋げたゴム状のヘルメットを着けた男の子、畑剛志の頭がfallの半円に吸い込まれていき、胴体を飲み込む手前で動きが止まった。
コウは畑剛志の手をそっと握る。
「畑剛志の脳波、読み込み完了だ。お前のヘッドセットと繋げるぞ」
ヘッドセットから少しの振動と機械音がした。
「よしよし、順調だな。いつでもいけるぞコウ」
「わかりました。いってきます」
「おぅ、安全運転でな」
目をつむり意識を畑剛志の手に集中させる。
チリッと鈍い痛みと共に静電気が体を駆け抜けコウは暗闇に落ちていった。
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