第16話徳島から高知へ

ホテルをチェックアウトして高松駅へ向かった石木いしきと五人の中学生、彼らはこれから高知県へ向かうことにした。

「高知と言えば、やっぱり坂本龍馬よね。」

「え、僕は土佐犬だと思うよ」

「まあ、高知にはどんな面白いことが待っているのか楽しみだよな」

高松駅から高知へは、電車ではなく高速バスで行く。

高松駅高速バスターミナルで高速バスに乗り込み、二時間十数分で高知駅に到着する。

「にしても、高速バスに乗るのって何だか新鮮だな。バスだけで目的地に向かうって、テレビ番組があったよね。」

「ああ、あの番組意外と面白いよね。」

「でもバスだけって行くのって、本当に大変だよ。番組見てて思ったけど、バス停からバス停まで歩かなきゃいけないんだよ。本当に電車の方が楽ちんだよね。」

「あら、西堂さいどう君。それは電車でも言えることなんだよ。」

「そりゃそうだけど、バスよりも電車の方が多くの人を運べるからいいよ。」

「な、バスにはバスの良さがあるの!!」

「はいはい、もうそこまでだ」

安室あむろ金山かねやまと西堂をたしなめた。

「はぁ~・・・。」

「おい、武藤むとう。どうしたんだよ、そんなため息なんかついて。」

島取しまとりが武藤に質問した。

「だって美佳さんと蘭子さんが、帰ってしまったからまた寂しくなったって思ったら、ため息が出てしまったんだ。」

武藤の一言に、それ以外のメンバーは昨夜のことを思い出した・・・。









あの時、風呂から上がった武藤・金山・西堂・島取の四人は、安室と石木から通帳が取られそうになったことを教えられた。

「すまなかった、美佳みか蘭子らんこがとんでもないことをしてしまった・・・。本当に申し訳ございませんでした」

石木が四人に土下座すると、美佳と蘭子が後に続いて土下座した。

「ごめんなさい、村瀬に頼まれたとはいえ許されないことをしてしまって・・。」

「ごめんなさい、ごめんなさい・・・。」

そして最後に安室が四人に土下座した。

「また親父の妨害で嫌な目に合わせてしまった・・・。本当に重ね重ね申し訳ない。」

「いいよ、通帳が戻ってきたんだし・・・。」

「そうよ、美佳さんも蘭子さんも安室君の親父の命令でやらされていたんでしょ、別に自分の金が欲しいって理由じゃないんだから、私は許してあげる」

「いや、俺は許せねえ・・・。」

島取がボソッと呟くと、金山が島取に食ってかかった。

「何でよ!!何でそんなこと言うのよ、自分の意志でしたんじゃないからいいじゃない!!」

「でも二人のやったことは窃盗じゃないか!!理由はどうあれ、警察に突き出すべきだろ!!」

「そうだよ、それにこのまま二人を許して一緒にいたら、またどんな妨害をされるかわからないよ。」

「西堂・・・、あんたまで」

「もういいの、金山さん!!二人の言う通りだから・・・、私と蘭子は帰ることにするわ。」

「うん、そうするよ。お互いに気まずいまま旅行するのは、かなり苦しいから。」

美佳と蘭子は改めて謝罪した。

「島取の言う通りだが、もし美佳と蘭子を警察に突き出したら、俺たちの修学旅行が世間に公開されて頓挫してしまう。だから追放で勘弁してくれ。」

安室がお願いすると、島取は「いいよ」と頷いた。

そして今日、美佳と蘭子は高松駅で石木と五人の中学生と別れた。











「武藤、昨日の出来事は悲しかったけど・・・、広い目で見ればそれも思い出の一つになるよ。」

「石木さん・・・。」

「まあ、あんなことしたけど美佳さんと蘭子さんは、面白い人だったし。」

島取が武藤に言った。

「ああ、しっかりしているようで少し抜けているとこあるからな」

石木が言うと武藤は小さく笑った。






神戸港へ向かうフェリーに乗っていた美佳と蘭子は海を眺めながら呟いた。

「私、悪い事言っちゃったなあ・・。」

「何を言ったのお姉ちゃん?」

「あれは修学旅行じゃなくて、集団エスケープって言ったことよ。本当は旅行できて嬉しかった・・・、あの五人の中学生たちと一緒に」

「そうだね、それにしてもお兄ちゃんと五人の中学生はどこまで行くんだろう?」

「それはわからないわよ。」

中学生との思い出が海風と混ざり合い、美佳と蘭子の脳裏に鮮烈に思い浮かんだ。



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