『中』

 夜という怪物の腹の中。それは彼女を大きな一口で飲み込んでしまった。

 中にいた人はかなり昔の被害者だった。そんなところで、それでもあの中で生き残ることを選択している。彼女は生きていると言えるだろうか。食事はなくても死ぬことがないけれど、生き残るための足場はあの人の確保していたところしかわからない。腹の中うごめいて消化しようとしてくるのをどうにか避けようとする。足場なんて、暗闇では探せない。

 ドプン、胃液のような中に落ちた。

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