ヒロト16

 オフ会に行き、先ほど撮ったチェキを見せると、皆から歓声が上がった。

「おお、これはすごい!」

「さすが、まい姐!サービス満点だなあ」

「でも、ここまではなかなかしないよね?事前に鑑定さんに相談して、オッケーを貰っていたのだと思う」

 それくらいの2ショットを撮るのは普通だと思っていたのだが、ここまで顔を近づけることは滅多にないということを聞いて、ヒロトは驚いた。

「ヒロトが毎回オーディションに参加して、勝てなかったのを知ってたんじゃないかな?何回目だった?」

「7回目で、やっと勝てました」

「そんなに」

 笑いが起こった。

「それも初回は騙されてダメだったことも、まい姐は知ってたんじゃないかな?」

「それはあり得る。だから、謝罪の気持ちも込めてのサービスだと思う」

「でも、まい姐はヒロ君のこと気に入ってるんじゃないかな?嫌っていたら、絶対にここまでしないよ」と、タクが言った。

 ヒロトはまたも驚き、本当かなと思ったが、もちろん満更ではなかった。

「僕もまい姐の推しになろうかな」

リクがぽつりといい、みんな笑った。

 ヒロトの心は幸福感で満たされていた。これだけ幸せに感じたことはこれまでの人生で何回あっただろうか?

 そう思えるほどの幸せなひと時であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る