ボクの想い出

藤之海

第1話

僕が通う学校は特別頭が良いわけでもないし、はたまた悪いわけでもない。普通の私立高校で、校則も厳しくはないし緩くもない。髪を染めてくるような生徒は誰一人としていないし、いじめだって見たことがない。そんな絵に書いたかのような学校で、金髪のイケメン男子が転校してくるなら注目を浴びる事になるのは当然の事。かくいう自分もその一人で、担任の先生の呼び声とともにドアから入ってくる青年に男女問わず注目していた。

「はじめまして、父の仕事の都合で引っ越してきました。金田弘かねだ こうです。よろしくお願いします。」

爽やかな笑顔で話す彼にクラスの女子は目を輝かせ、男子はまるで新しい遊び相手が増えた子供のようにワイワイと盛り上がっていた。そんな彼らをなだめるように優しく、静かにするようにと注意するが一向に静かになる気配がない。先生は気にせず金田に席に座るように指示した。

「それじゃあ金田は浅野の隣ね。浅野、手を上げろ。」

急に呼ばれた僕はドキリと胸を鳴らし瞬時に手を上げると、周りを見渡していた金田が一直線に、ニコニコしながらこちらに歩いてくる。

「こんにちは、金田です。名前を聞いても良いかい?」

なんとも自然な2度目の自己紹介なのだろう、しかも名前まで聞いてくるとは。かなりのコミュ力だ。基本的には人見知りな性格の僕には到底真似できないことだな。

「うん。浅野凛あさの りんです。よろしく、お願いします。。」

こちらも打ち解けようと、タメ口で話そうとすると自然に敬語になってしまった。内心恥ずかしいし、もしかしたらコミュ症だと思われたかもしれない。そんな心配とは裏腹に金田の反応は紳士そのもので。

「あはは、敬語なんて止してよ。同じクラスなんだから。とても礼儀のいい人なんだね。雰囲気も大人びてるよ。」

流石イケメンと言わざるを得ない。いや、そこらのイケメンとは一緒にしてはいけないな、相手に悪い思いをさせないように気さくな笑顔でフォローまでしてくれるなんて、いい人に違いない。

ありがとう。そう金田に伝えると授業開始の5分前になるチャイムがなった。



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