第20話

静かにドアをノックしたら、

どうぞ、と擦れ声が聞こえたので、

二人して、そっとアイリの部屋に入ると、やはりというべきか、まぁ、当然、

布団にくるまってた。

しかも、顔を出してない。


「アイリ、あのさ、具合どうだ?」


「結構いいよ。あのね、お兄ちゃんがキスしてくれたら、治る!」


ガバリと布団を跳ね除けてくれたが、

何言っちゃってんの。


で、俺の横にいる新カノっていうか、まぁ、

偽カノなんだが、マヒロを見て、

震えていた。


「だ、誰よ...!その美少女!?」


「あー、紹介するわ。

俺の新カノで、名前は...」


「ミヒロでーすっ!よろしくね!シンジの妹ちゃん!!」


マヒロの奴が勝手に1オクターブ高い声を

出しやがって。


自己紹介を済ませてくれた。


「これー、妹ちゃんの為に作ったの...!

食べてほしいなっ?」


完全にマヒロの奴、キャラ変してしまってる

感があった。


アイリはぷいっと横を向いたが、

やがて、アイリのお腹の音が聞こえてきて。


俺が、

「食べなきゃだろ?滅茶苦茶うまいぞ?」


と言ったら。


「仕方ないわね...!もらうわ!」


と、まだあさっての方角を向きながら

お盆に向かって手を差し出してくれた。


「ちょっと、お兄ちゃんと二人だけにしてほしい。新カノさんは出てってほしい。

でも、その、作ってくれてありがとうございます...」


「はーい!じゃ、私、出てくね!!

てか、もう、家に帰るね!」








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