SLIOP

エリー.ファー

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 あなたのことが好きです。

 大好きです。

 最初の内は、遠くからで満足していました。

 でも、大好きで大好きで仕方ないです。

 友達になろうとも思ったけれど、上手くできませんでした。そのことに気が付いているとは思いますけど、どうですか。気づいていましたか。

 私はずっと、大好きだったし、恋人がだめなら友達とか思ったりしたけど、やっぱりだめで、恋人がいいなぁって思ったりしてました。

 恋人って手を繋いだり、一緒にご飯食べたりするものだから、そっちの方がいいなぁって。

 毎日、思いました。

 あの、いつも青いシャツを着てますよね。

 それは、なんでですか。

 青色が好きなんですか、それとも青色って爽やかな感じがするから選んでるとかそういうことですか。

 私は、青色もいいと思うんですけど、白のシャツも似合うと思います。爽やかさだったら青にも負けてないです。それに、絶対に似合います。白いシャツって実は凄く着こなすのが難しいんですけど、きっと大丈夫です。絶対に似合います。

 前に、ドラマを見ていたらイケメン俳優が白いシャツを着て、主人公の彼氏役だったんですけど、全然似合ってなかったんですよ。めっちゃ笑っちゃって、全然感情移入できなくて凄く困ったんです。

 その時に、あなただったら凄く似合うだろうなって思ったんです。それで、あなたのことが好きだってことにも気が付いて。

 そういう感じです。

 私は基本的に勉強が好きです。本を読んだり、何か調べてそれをノートにまとめたりするのが大好きです。でも、すっごく勉強が好きってわけじゃなくて、あくまでそういうことが好きってことなんです。良い点を取りたいとか、悪い点を取りたくないとか学校の先生に嫌われたくないとかそういうことじゃないんです。本当に、自分にできることがこれしかなくて、唯一の取柄みたいな感じなんです。だから、やってるだけです。

 でも。

 私は、自分のそういう所がめっちゃ好きです。自己紹介をしようと思ったのに、ナルシストみたいな感じになっちゃったんですけど、でも、好きです。私は、私のできることを毎日やっていて、そうやって自分がここまでこれをやったんだなぁとか、ここまで積み重ねたんだなぁとか思ったりするのが好きです。ほら、ノートとかを重ねるとちょっとした厚みくらいにはなるじゃないですか。あれを見るのが凄く嬉しいんです。

 自分は自分なんですけど、自分の分身がそこに出来上がったみたいな感じがするんです。

 分かりませんか、この感じ。

 あぁ、伝わってるといいなあ。

 本当に、伝わっていますか。

 ここまでちゃんと読んでくれていますか。

 捨てずにとっておいてくれていますか。

 付き合えないし、手も握れないし、キスもできないけど。

 忘れないでいてくれますか。

 これを読んでいるあなたが。

 私の顔を知らなくてもいいから。

 私のいた病室も知らなくてもいいから。

 私のかかっている病も知らなくていいから。

 私がいつ亡くなったのかも知らなくていいのです。

 ただ、私がどれだけ。

 自殺未遂を繰り返してこの病院に運ばれてくるあなたを心配したか知っていますか。

 私は生きられなかったし、あなたのもとに行ってこの手紙を渡す体力もなかったし。

 何より恥ずかしくて。

 看護師さんに、私が亡くなってから、またあなたが運ばれてくることがあったら渡してください、としか言えなかったけれど。

 あなたのことが大好きでした。

 初恋でした。

 私は。

 あなたの人生に登場する、あなたの最後の恋人になりたかったけれど。

 あなたにこれからも生きて欲しいので。

 あなたは、今の何倍も何十倍も何百倍も生きて。

 たくさんの人に会って。

 私を。

 あなたに恋をした、ただの脇役でいさせてください。


 本当に本当に幸せでした。

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