4月21日(金)曇り 新入部員推参
昨日と比べると少し涼しさを感じた民法の日。
今日から外回りの勧誘は諦めて、通常通り文芸部の活動を行うことになっていた。
しかし、1時間目が終わった休み時間に、日葵さんからLINEで全体連絡が入る。
――新入部員3人来てくれるって!!!
昨日の段階で入部届が顧問の豊田先生に提出されていたようで、今朝日葵さんに報告されたらしい。
僕自身はあまり勧誘を成功させた実感はないけど、この期間の活動が積み重なって入部に繋がったと思っておこう。
実際、僕よりも現2年生に後輩ができたことが本当に良かったと思う。
「それじゃあ、簡単でいいから1人ずつ自己紹介して貰いまーす! あっ、出身中学と好きな本のジャンルも言ってね」
そして、今日の活動が始まる前に日葵さんが3人に自己紹介を求める。
3人ともさすがに初回だけあって緊張した面持ちだけど、1人が率先して喋り出す。
「は、初めまして! 1年4組の野島結香です! 北中出身で最近はミステリーにハマってます! よろしくお願いします!」
「あ、あたしは石渡沙綾といいます。好きな本は……海外のSF小説です。あっ、出身は西中です」
「三浦将基。西中出身。好きなジャンルは……ざっくりラノベって言っときます。よろしくお願いします」
「はーい、ありがと! ひまりは東中だから直の後輩はいないかなー あっ、みんな座って大丈夫だよ」
日葵さんがそう言うと、3人は安心したように着席する。
同じ男子として三浦くんに注目すべきなのかもしれないけど、一番気になるのは野島さん(妹)だ。
「良助くん。あの野島さんって……」
「うん。うちのクラスの野島さんの妹さんらしい」
事前に言われていたから姉妹感があると思ったけど、路ちゃんもすぐにわかるくらいには似ているようだ。
率先して自己紹介していくところも、どこか野島さん(姉)を感じさせる。
でも、文芸部として関わる時は、姉妹を切り離して考えなければならない。
それから、本日の文芸部の活動を実際に参加して貰った後、雑談の時間が設けられる。
「三浦くん! 良かったらこっちで男子組として話そうじゃないか!」
「……あっ、すみません。今日は疲れたので帰っていいですか?」
「えっ……ああ、うん」
「……失礼します」
しかし、三浦くんは桐山くんの誘いを断ってすぐに帰ってしまう。
まぁ、雑談の参加は自由としていたし、初日で疲れる気持ちはわからなくない。
「産賀先輩……俺、絡み方間違ってないっすよね……?」
「だ、大丈夫。今日は都合が悪かっただけだよ」
「そ、そうっすよねー あはは」
一方、野島さん(妹)と石渡さんの方も少し質問された後、長居はせずすぐに帰宅していた。
「産賀センパイ……ひまりの歓迎するテンション間違ってないですよね?」
「ま、まぁ、初日だし仕方ないよ」
「……ですよねー! よーし、来週はもっと仲良くなっちゃうぞー!」
部長と副部長はやや不安を感じているようだけど……よく考えたら去年の日葵さん達が異様に馴染むのが早かっただけのような気がする。
僕の時だって、路ちゃんが文芸部の雰囲気に慣れるまで少し時間がかかっていた。
「……? わたしの顔に何か付いてる?」
「ううん。ちょっと昔の路ちゃんを思い出してただけ」
「昔……って、どれくらい昔……?」
だから、2人には焦らずにコミュニケーションを取って貰いたい。
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