3月17日(金)曇り 後輩との日常・岸元日葵の場合その14

 雨はぎりぎり降らなかった金曜日。

 本日の文芸部では部長と副部長の交代が行われる。

 以前に相談していた通り、部長は日葵さん、副部長は桐山くんに任せることになった。


「あの、お二方。俺から言うのもおこがましいかもしれないっすけど……本当に日葵が部長で大丈夫っすか?」


「ちょっとそれどういう意味~」


「だって、冷静に考えたら伊月さんの方がいいと思うし」


「それはわたしも思ってる」


「茉奈まで言うの!?」


「でも、やる気があるのは日葵の方だから。それに日葵はみんなを引っ張るという意味では部長適性があると思う」


「茉奈……!」


「そうなると、わたしが副部長……になると色々大変そうだから桐山に任せる」


「俺の扱い!?」


 そんなやり取りはありつつも最終的には桐山くんが納得したことから、正式に引き継ぎが決まった。

 4月から男子が入ってくるかはわからないけど、部長・副部長のどちらか男子であった方が一応バランスとしては良い気がする。


「詳しい手続きについてはまた解説するし、わからないことがあったらその都度解説するから」


「ありがたいっす」


「日葵ちゃんにはあまり言わなくていいかもしれないけれど、気を張り過ぎなくても大丈夫だからね。わたしでも1年間やってこれたから」


「もー 自分を卑下しないでくださいよー 路センパイのきっちりした部長っぷりのおかげで1年楽しくできたんですから」


「ありがとう。わたしもみんなが協力的だったから助かることが多かった」


「まぁ、俺は冊子の提出ぎりぎりだったんすけどね……」


「桐山はさぁ。ひまりに文句付ける前に自分を見直した方がいいんじゃないのー」


「い、言われなくてもわかってるわ。でも、あれは上手くまとまらなかったのもあるあし……」


「あんまりにもだったら青蘭に交代して貰うからねー」


「副部長よりも部長を陰で操るポジションがいい」


「いや、それを公然としてどうすんの。桐山なら操ってもいいよ」


「えっ!? 姫宮さんが俺を!?」


「遠慮する」


「だから、俺の扱い!」


 振り回される桐山くんを見て、何となく僕とポジションが似てきたと思ってしまった。

 いや、副部長に必要なのはそういうスキルじゃないんだけど。


「じゃあ、このままひまりが仕切ってみてもいいですか? こほん……それでは皆様、新入生の勧誘に向けた準備を進めましょう」


「なんで丁寧になったんだよ」


「締めるところは締めようと思って。それより桐山はとっと動いて」


「へーい」


 不安がないかと言われたら嘘になるけど、なんだかんだ日葵さんと桐山くんのコンビならやっていけそうな感じがした。

 僕と路ちゃんよりも活発な文芸部として、新入生を引き寄せてくれると信じながら、普通の部員に戻った僕は作業するのだった。

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