2月27日(月)晴れ 急接近する岸本路子その4
2月も残り2日になった月曜日。
テストは木曜からなのでこの3日間が追い込み期間になる。
そんな今日は塾……へ行く前の時間で、路ちゃんと勉強することになった。
塾で勉強しているのでそんな感じはしなかったけど、路ちゃんとサシで勉強するのは随分と久しぶりだった。
「…………」
「…………」
図書室だから当然ながら無言で勉強することにはなるんだけど、一緒に勉強するだけでも十分……いや、今の僕にとっては少々困る事態だった。
2人きりではないけど、静かな部屋で隣に座られていると……まだ先日の件を思い出す。
テスト週間に入って少しの間は頭から抜けていたはずなのに、こんな場所でまた思い浮かんでしまうとは……
「良助くん……」
「ひっ!?」
急に隣の路ちゃんが耳元に近寄って声をかけるので、僕は驚いて声が出そうになった。
「ご、ごめんなさい。ちょっと質問したいところがあったのだけれど、大きな声は出せないと思って……」
「そ、そうだよね。大丈夫。問題ない」
「じゃあ、ここの問題なのだけれど……」
何とも情けない姿を見せてしまった。路ちゃんの方はすっかりいつも通りの対応ができているといるのに……僕は思った以上に純情なんだろうか。
「……ありがとう。良助くん」
「ううん。全然」
「……良助くん。ちょっとごめんね」
「えっ?」
今度は一応声をかけてから行動に移ってくれたけど、何をするかと思ったら……耳を触られた。
「……凄く真っ赤になってたから……やっぱりさっきのびっくりさせちゃった」
「あっ、いや……そうだけど……そんなに赤いの?」
「うん。赤くて……温かい」
そう指摘されると、自分の耳が凄く熱くなっているのをより実感する。
路ちゃんは……最近、わざとかと思うくらいこういうことを仕掛けてくる。
いや、この程度のことは彼氏彼女なら普通なのかもしれないけど……ここは一応図書室だし……今は勉強中だし……
「あっ、ごめんなさい。ずっと触っちゃった……」
「べ、別にいいよ。これくらい」
「……な、なんかわたしまで熱くなってきた」
「じゃあ……僕も耳を触っていい?」
「それは……駄目かも」
「ぐぅ……」
「……あ、あとで。図書室出てからなら」
路ちゃんは恥ずかしそうに言う姿は可愛いと思ったけど、僕はこの場で触られたのになぁと、ちょっとだけ思ってしまった。
……うん。今日のは完全に惚気話かもしれない。テスト前にやることじゃなかった。
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