2月14日(火)晴れ バレンタイン・ハイ
とうとうバレンタイン本番の火曜日。
昨日の夜、明莉は無事にデコレーションを完了したようで、今日の朝には大きめの袋を持って登校して行った。
本命の桜庭くんに気に入って貰えることを願いつつ、続けて僕も家を出ようとすると、LINEの路ちゃんからのメッセージが入る。
――良助くん。学校に着いたら部室まで来てくれない?
それを見た僕は慌てて自転車に乗って学校を目指す。その意図は何となく予想できたけど、絶対にそうとは言い切れないので、なるべく早く到着したかった。
なので、僕は教室に行かず、直接部室まで向かう。
先に着いた僕が5分ほど待つと、路ちゃんが驚いた顔をしながらやって来た。
「おはよう、良助くん。荷物置いて来なかったの……?」
「う、うん。ついさっきついでに来たところだから」
「それなら良かったけれど……どうしよう。一応、中に入っていい?」
路ちゃんはそう言いながら部室の鍵を取り出して開ける。
そうして、中に入ると少しだけ緊張した様子で僕と向き合った。
「え、えっと……なんて言いながら渡すのが正解かわからないけれど……ハッピーバレンタインということで」
「ありがとう、路ちゃん。たぶん、今までの中で一番早くチョコ貰えたよ」
「そ、それなら良かった。今日は部活でも会うからその時でもいいかなとは考えたのだけれど……やっぱり最初に渡したかったから」
そう言いながら照れる路ちゃんを見て、僕まで照れてしまった。
そんなことを思ってくれるなんて、本当に嬉しい限りだ。
「ただ……部室を私物化してしまったのは、少し反省しないと……」
「まぁまぁ。ソフィア先輩と藤原先輩も一回私物化してたし」
「そ、それはそうだけれど……あんまり恒例化させても良くないと思う」
「そのうち、恋人達の伝説の場所になったり?」
「良助くん、ちょっとテンション高くなってる」
路ちゃんは微笑みながらそう指摘されるけど、僕は恥ずかしくなかった。
たまにはこういうテンションになっても許されるだろう。
「早速食べたいところだけど、帰ってから頂くよ」
「うん。それじゃあ、教室に戻りましょう」
それから、時間は流れて放課後の文芸部。
修学旅行のお土産もあるので、今日の部室内はお菓子だらけになっていた。
「わー、ありがとうございます。産賀センパイ、路センパイ! 今日は甘いの中心だからちょうどしょっぱいの食べたかったんですよー!」
「まぁ、あんまり食べ過ぎても駄目だから程々にね。あと、クッキーもあるからみんな今月中に食べて貰えれば」
「いやぁ、これは暫くダイエットできないなぁ。よし、それじゃあみんなのチョコを食べつつ、センパイ達の修学旅行の話……も聞きたいところだけど、まずは今日のこと聞いちゃおうかなー?」
完全に仕切り始めた日葵さんの目線は、路ちゃんと伊月さんに向けられていた。
「路センパイはもうチョコ渡したんですかー?」
「そ、それは……うん」
「おおー! いつですか!? こっそり机に入れたり? それともひまり達が来る前とか?」
「こら、日葵。あんまり聞き過ぎるのは良くないわ」
「そう言っておきながら茉奈も気になってるでしょ」
「……はい」
「ま、茉奈ちゃん!?」
「大丈夫です、路先輩。この後、どうせわたしも答えさせられるので!」
「大丈夫じゃないけれど!?」
「しょうがないなー 貰った方に聞いちゃいますかぁ?」
完全に女子会トークを始め出す3人。
一方、そこから一歩引いて見ていた僕を含めた4人は、普通にチョコをつまもうとしていた。
「リョウスケ。ミチちゃんの分のチョコがあるのですから、あまり食べ過ぎてはいけませんよ」
「確かにそうだ。いやでも、一口くらいは……」
「ミチちゃんのチョコだけでは満足できないというのですか!?」
「違う違う! 一口も食べない方が失礼って話! 花園さんだって持ってきてくれたわけだし」
「華凛はリョウスケに渡すつもりはありませんが?」
「……言われてみれば貰ってないかも」
「産賀先輩は贅沢ですよ! 本命1つは義理が何個集まっても勝てないんですから!」
花園さんの話に加勢してきた桐山くんは、悲しそうな表情をしていた。
なぜなら、義理でも貰いたかった姫宮さんが――
「みんな持ってくると思って敢えてチョコは持ってきませんでした。私は食べ専」
「そんなぁ!」
「後日持ってくるかもしれませんし忘れて何もしないかもしれません」
そう言いながら姫宮さんはマイペースにバレンタインと修学旅行のお土産を次々と食べていく。
まぁ、バレンタインは義務ではないので、姫宮さんの考え方もいいとは思うけど……桐山くんにはかなり同情する。
それでもみんなでお菓子を囲んでいる時間は凄く楽しかったので、僕にとっては満足できるバレンタインだった。
路ちゃんからのチョコは……個人的に楽しんだとだけ記しておく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます