2月9日(木)曇り時々晴れ 北の修学旅行その2

 少し晴れたけど、寒さは厳しい2日目。

 この日の午前中はみんなお待ちかねのスキー・スノボー実習だった。

 しかし、残念ながら僕にとってはそうでもなく……


「ぐえっ!」


「りょ、良助くん、大丈夫!?」


 一番下のレベルでも足を取られまくっていた。

 この実習でいいところがあるとすれば、大倉くんや路ちゃん、花園さんと共に行動できるところくらいかもしれない。


「ふっ、リョウスケもまだまだですね」


「そ、そう言う花園さんは一歩も動いてないじゃないか」


「これは……北海道の大自然と一体化しているところです」


「物は言いようだ」


「そんなことより、リョウスケがそのようなザマではミチちゃんも安心して統べられません」


「だ、大丈夫。わたしも……自然と一体化中だから」


 まぁ、文芸部の身と考えれば、この状況は予想通りとも言えるけど……3人揃ってちょっと不甲斐なさを感じていた。


「う、産賀くん。言ってなかったけど……ぼ、ボク、ちょっと高所恐怖症」


「そうだったんだ。でも……この感じはちょっと不安になるよね」


 何気に初めて乗ったリフトは透き通った山の景色が見えるのはいいけど、吹きさらしの状態は少し怖く感じた。

 それから坂道を滑る……というよりはほとんど歩行しながら下っていく。

 普段の体育以上の運動量になっているけど、修学旅行中の高揚感のおかげか、歩いているだけでも何となく楽しさはあった。


 そして、午後の前半はオリエンテーションとして乳製品の作成体験が行われる。

 チーズかアイスの選択肢があって、昨日もアイスを食べたのと寒さ的なところから僕はチーズの作成を体験した。

 ただ、どちらにしても振る作業が途中に入るので、スキーで負ったダメージが少しばかり残っていた。


 そして、夜にはスキー場の夜景を見学するという、なぜかロマンティックな体験が行われる。

 午前中に滑っていた場所がライトアップされると、幻想的な風景が見えた。

 ナイターで滑る人は、この明かりを見ながら風を切れると言われたけど、僕には円が無さそうな話だ。


「綺麗だね」


「あ、ああ。うん」


 でも、そこで路ちゃんに声をかけられると、一気に緊張感が増してきた。

 決してその目的で見ているわけではないんだろうけど……いや、本当になんでこの景色をクラスで……?


「おふたりさん、写真撮ろうか?」


「あ、亜里沙ちゃん?」


「まぁまぁ、暗いから多少大丈夫でしょ。あっ、終わったらミチはアタシともツーショしてね。ほら、うぶクン、もうちょい寄って」


「わ、わかった」


 そう言って大山さんに促されるまま、夜景を背景に写真を撮って貰う。

 その後、交代で写真を撮ったりして……何だか結構楽しかった。


 ちょっと不安だったスキー・スノボー実習も含めていい2日目になったと思う。

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