11月15日(火)晴れ 後輩との日常・桐山宗太郎の場合その11
ぼんやりとした気持ちで迎えた火曜日。
一応、昨日で仲直りしたと思っていたけど、教室でも部室でも一週間前とは違う意味での気まずさを感じてしまった。
「はぁ……彼女欲しい……」
そんな中、僕の隣で桐山くんはそう呟く。
間違って心の声が出たわけじゃなく、聞かせるように言った気がしたので、僕はその理由を聞き始める。
「どうしたの、唐突に」
「産賀先輩、今日で11月も折り返しですよ」
「そうだね」
「つまりはクリスマスがある12月がだいぶ近づいてしまったってことですよ!」
桐山くんは拳を握りながら力強く言う。
そう言われても、まだ1ヶ月以上ある……と思ってしまった辺り、僕があまり気にしてないことだった。
「そ、そっか。桐山くんは……意識高いね」
「そんなことないっすよ。こんなこと言いながら俺は何の行動も起こせてないっすから……最近は姫宮さんとも普通に話せるようにはなったんすけど……」
「おお、良かったじゃない」
「いや、普通に話すのに慣れ過ぎて恋愛トークに持って行ける雰囲気じゃないんすよね……」
確かに桐山くんが部室内で姫宮さんと話すところはよく見かけるようになったけど、あくまで同級生ないし同じ部員として話していると思う。
桐山くんが僕に話すような感情は抑えているからこそ、今の関係が成立しているのだろう。
そう考えた瞬間、僕は思わず路ちゃんがいる方向に目線を向けてしまった。
今は人のこと考えて意見を言えるような状況じゃなかった。
「産賀先輩?」
「……ご、ごめん。何の話だっけ?」
「産賀先輩はクリスマスの予定ないんすかって話っす」
「いや、何の予定もないよ。というか、聞くには早過ぎるし……」
「ええっ!? じゃあ、これからできる予定が……」
「違う違う。本当に早くて何もわからないって意味」
「でも、クリスマス商戦はこの時期から始まってるんすよ! 動くなら今しかありません!」
「なんで僕も予定を作る前提になってるの!? れ、例年通りケーキとチキンが食べれたら……それで十分だよ」
「そうっすか……じゃあ、産賀先輩は文芸部の聖域として残って貰うっす。藤原先輩は遠くへ行っちゃったんで……」
桐山くん的には一緒に頑張りましょうというニュアンスで言っていたのかもしれないけど、今の僕には変に刺さってしまうのでこの場では否定するしかなかった。
でも、動くなら今しかないというのは……本当にそうなのかもしれない。
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