11月10日(木)曇り 本田真治の助言その3

 1日中暗い空模様だった木曜日。

 この日の昼食は4組で取ることになった。

 松永の気まぐれからの提案だったけど、教室で少しばかりの気まずさを感じている僕にとってはいい気分転換だった。


「そ、そういえば……本田くんはボクらと食べてていいの?」


 そんな中、大倉くんが本田くんに対して心配するように言う。

 大倉くんも数日前に栗原さんと付き合い始めた報告を受けたらしく、話を共有した時には非常に驚いていた。

 それと同時に「ほ、本田くんって結構イケイケだよね……」と僕と似たようなことも言っていた。


「学校にいる間はそれぞれ友人との時間を大事にしようって感じになってるんだ」


「な、なるほど……」


「まぁ……前回はそこを失敗した感じもあったし」


「ぽんちゃん。自分から掘り起こさないでもいいのに」


「いや、反省は大事だからな」


 本田くんはそう言いながら苦笑いを見せる。

 僕は本田くんのような実績がないけど、性格的には似ているから自虐したくなる気持ちは何となくわかる。

 実際にこの前の僕は……自分を下げ過ぎて空気を悪くしてしまったのだから。


「それに共有しておけばみんなの戒めにもなるだろ」


「ぼ、ボクはあんまり関係ないかなぁ……」


 大倉くんはそのまま松永の方に視線を移す。


「こらこら。確かに現状で当てはまるのはオレだけど、オレは全然大丈夫だから。現にこうやってみんなと昼飯を優先してるじゃないか」


「いや、2人がいない時はやたら彼女の話題出してるだろう」


「そんなことないもん! それに今はぽんちゃんにもいるんだし、そういうトークは自然でしょ」


「俺は別に話してないんだが……良ちゃんも何か言ってやれ。いつも聞かされてるんだろうから」


「……ああ、うん。でも、最近はマシになったんじゃないかな」


「ほーら」


「まぁ、普段話してる時間が多いのは本田くんの方だから、きっと本田くんの言い分の方が正しいんだけど」


「そんなぁ……」


 松永の反応に僕と大倉くんは笑って返す。

 だけど、話を振ったはずの本田くんは何故か神妙な表情をしていた。


「良ちゃん」


 そうして昼食が終わって自分達の教室に撤退しようとしていた時、本田くんは肩を組んでくる。


「ど、どうしたの?」


「いや……たぶん勘違いだと思うんだが、今日の話題が気に障ったならすまない」


「えっ。全然そんなことないよ」


「そ、そうか。その……松永にはああ言ったが、俺もちょっと浮かれているんた。だから、この前も良ちゃんによくわからんことを言ったかもしれない」


「……それを反省してると」


「ああ。まぁ、ともかく……勘違いなら良かった」


「いやいや。また来るよ」


 僕はそう挨拶して大倉くんと一緒に教室へ戻った。


 恐らく本田くんは僕の様子がちょっとおかしいことに気付いてくれて、声をかけてくれたのだろう。

 でも、今日の話は謝られるどころか、僕が感謝しなければならないような内容だったと思う。

 僕も反省した上で……次のことを考えよう。

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