11月9日(水)晴れ 重森美里の介入
何だか折り返しまで早く感じた水曜日。
本日も塾があるので、路ちゃんが隣の席に座っていたけど、月曜から引き続いてお互いの口数は少なめだった。
「やっほー 今日も遊びに来たよ、岸本さん」
ただ、先週から重森さんが路ちゃんに絡むようになってくれたので、僕としてはかなりありがたかった。
「そろそろテスト結果が出揃うから、塾内のランキングも発表だねー」
「う、うん。あんまり自信はないけれど……」
「私もー 上位の人とかは東大目指してたりするのかな」
「どうだろう……?」
まだ路ちゃんの方は探っている感じはあるけど、重森さんが話題をどんどん振っているので、会話は潤滑に進んでいる……と思っていた。
しかし、路ちゃんがお花を摘みに行ったタイミングで、重森さんは僕が予想していない行動に出る。
「ねぇ、産賀の兄さん」
「……何その呼び方」
「別に深い意味はないよ。そんなことよりさ、岸本さんと何かあった?」
昨日も似たようなことを聞かれたので僕はわかりやすく驚いてしまう。
こんな反応をするくらいだから、バレてしまうのかもしれない。
「なんか月曜から2人の間に微妙な空気が流れてる気がして」
「そ、そんなことはないよ。たまにはあんまり話さない日もあるし」
「つまりはあんまり話してない自覚があると」
「ま、まぁ、そうかな」
「ふーん……」
重森さんは完全に疑いの目で見ていた。
会話を重ねている路ちゃんと松永から聞いた程度しか知らない僕では、僕の方に何か責任があるように見えてしまうのだろう。
いや、実際に全ての責任は僕の方にあるんだけど……
「し、重森さん!」
重森さんにどう対応しようか困っていると、帰って来た路ちゃんが慌てた様子で話し出す。
「こ、これは良助くんが悪いわけじゃなくて、その……色々あってのことだから」
「色々? 何があったか聞いていい系?」
「き、聞かれると……困る系……」
「うむ。それならやめておきましょう。ごめんね、産賀くん」
「う、うん……」
あっさりと諦めた重森さんは颯爽と元の席に帰って行く。
「あ、ありがとう、路ちゃん」
「ううん。気にしないで」
「というか重森さんが僕のことを責めてるのよくわかったね。席を外す前には何ともなかったのに」
「それは……どちらかというと、良助くんが困った顔をしていたから」
「……そうか。つくづく僕はわかりやすい奴なんだな」
「わ、悪いことではないと思うけれど……」
路ちゃんにそう言われたものの、返す言葉が思い付かなかったから、会話はそこで止まってしまった。
情けない話だ。せっかく路ちゃんが助けてくれたというのに……いや、それでは重森さんを悪い風に言ってしまっているか。
重森さんは微妙な雰囲気を察した上で、路ちゃんの助けになりたかったのだと思う。
今度は余計な気を遣わせないようにしなくては。
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