10月3日(月)曇り 後援する大山亜里沙その4

 10月の最初の月曜日。

 この日の7時間目のHRに文化祭のクラスの出し物についての相談が行われる。

 昨年と同じく部活の方が優先されるので、僕はこの後ある塾のために半分休憩しながら話を聞いていた。

 そんな中、僕の背中をスッと誰かがなぞる。


「うひゃあ!? 何!?」


「こらこら、寝ちゃダメだよ、うぶクン」


 その犯人は相談のために席を外していたはずの大山さんだった。


「この時間は頼んでないんだけど……」


「そうかもしれないケド、一応参加する姿勢は見せないとダメでしょ。いくらうぶクンが文芸部だからって」


 そこについては大山さんの言う通りなので、僕は身体を伸ばしてから姿勢だけ正す。


「よしよし。ちなみに今はみんな苦戦中だよ」


「そっかぁ。被らないようにするのも大変だもんなぁ。あっ、女子バド部は今年何の屋台やるの?」


「オリジナルドリンクの予定だよ」


「へぇー 今流行りのドリンクって何だろう……」


「おっ。うぶクンのトレンド把握能力が問われるね。何だと思う?」


「いきなりクイズ? うーん……タピオカ以来そういう話題は聞いてないな。そもそも今年は食べ物で何が流行ってるか全然わからない」


「ごー、よん、さん……」


「制限時間もあるの!? じゃ、じゃあ、逆にシンプルなミルクティー」


「残念! 正解はそんなに爆流行りしてるドリンクはない、でした!」


「そんなのあり!? いや、確かにタピオカほど聞かないけど」


「だから、アタシ達としてもどうするか迷ってるんだよねー うぶクン、何かいいアイデアない?」


「えっ? クラスの出し物の話はどこへ……?」


「そっちは文化祭実行委員会に任せて……」


「ミイラ取りがミイラになってる」


「あはは。まぁ、アタシが今抜けてる時点で話は進んでるから」


「つまりは……暇つぶしだったか」


「そゆコト。あっ、でも、話進んでるっぽいよ。ほら、うぶクンも聞きに行こう」


 そう言って大山さんは黒板の前に向かって行くので、僕も一応付いて行った。

 結局、2年3組の出し物はバルーンアート等に決まったらしい。

 等が付いているのはこれだけだと押しが弱いのでプラスで何か制作できるものを本番までに考えようという感じだ。

 これで文化祭実行委員やクラスで協力的な人はバルーンの作り方を覚えるというのだから、文化部以上に準備が大変かもしれない。

 でも、久々にバルーンアートを見るから、ちょっとだけ楽しみになった。

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