9月26日(月)晴れ 桜庭くんと桜庭さん

 体育祭の振替休日になった月曜日。

 その反動で何もやる気がなかった僕はだらだらとした休日を過ごしてしまった。

 意外にも家に一人でいる休日は珍しいけど、だからといって特別やることもないからこの休み方が正解だと思いたい。


「干からびてるね、りょうちゃん」


 最初に帰って来たのは部活終わりの明莉だった。

 居間で寝転がったままだったからそう言われても仕方ない。


「本当にあの部活対抗リレーで全部使い切っちゃったんだ。まぁ、結構いい勝負だったもんね」


「ありがとう……」


「正弥くんもびっくりしてたよ。りょうちゃんがあんなに走ってるの」


 そう言われても桜庭くんとは時々顔を合わせる程度だから、僕のあらゆる動作は初見で驚かれるような気がする。

 そもそも桜庭くんから見た僕のイメージってどんな感じなんだろうか。

 それを聞こうと思ったけど、それ以上に気になっていた件を思い出す。


「そ、そうだ。結局、桜庭くんの親戚が誰かわかったの?」


「ああ、うん。女子生徒だったよ」


「おお! それで名前は?」


「……あっ。聞いてない」


「ええっ!? なんで!?」


「だって、あの人が親戚だよって教えられただけだったから。でも、待って……確か何とか姉さんって言ってたから……」


「いや、その何とかって部分が重要なんだけど!」


「もう、そんなに言うなら今から聞くよ。ちょっと待って」


 明莉は渋々スマホを取り出して桜庭くんに連絡を取ってくれる。

 そこまで名前が出ているのに覚えてないのは本当に興味がなかったのだろう。

 もしくは桜庭くんとの他の会話が楽しくて……僕の疑問よりそちらが勝っているのだとしたら、なんか負けた気がする。


「りょうちゃん、わかったよ。親戚の名前は桜庭……こおり?さん」


「あっ……」


「どう? 知り合いだった?」


「……まだ同姓同名の可能性がある」


「ほぼ確定ってことじゃん。他の特徴とか聞いてみる?」


「い、いや、そこまではいい。そうか……」


 こんなところで繋がりができてしまうとは、世間は何とも狭いものである。

 まぁ、それがわかったところで僕が気まずく思うこと以外は、何も変わらない。

 変わらないのだが……やっぱり変な気まずさがある。


「いや、こんなこともあるんだねぇ。ねぇ、りょうちゃん。今度こおりさんと会わせてよ」


「う、うん。そのうち……」


 そのためにはまず僕が桜庭先輩に話を振らなきゃいけないけど……今日のところは疲れているのでまた今度考えよう。

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