8/30 Tues 既読1

「亜里沙、ノリ変わった?」


 彼女は中学時代の友人達から唐突にそう言われた。

 その言葉を一度租借した上で彼女は少し首を傾げながら「そうかなぁ」と返す。

 けれども、定期的に集まる友人達が言うのであれば、その認識が正しいのだろうと内心思っていた。


「なんていうか、肉食から草食になった感じ?」


「えー、それは違うんじゃない? おしとやかになったって言う方が合ってる」


「そうそう。もしかして、あたしらが知らないうちにもっとオトナになっちゃったとか!?」


 その言葉に彼女は曖昧な笑顔で返した。

 悪意はないのだろうけど、純粋な誉め言葉と受け取るべきかと悩む言い方だったからだ。


 自分のノリが変わったのだとしたら、それは去年のクリスマス前からだと彼女は思う。

 暫く恋愛はやめよう。

 そう考えてから友人の集まりで男子が混ざるような場面は避けるようになった。

 普段の学校では男子とも絡んでいたけど、中学時代の友人達はどちらかといえば恋愛至上主義なところがあるから、避けざるを得なかった。

 もちろん、中学時代の友人達からすれば、新しい出会いを提供して元気づけようとしてくれた一面があることを彼女は理解している。

 でも、今の自分には向いていない。

 少なくともクリスマス以降の彼女はそう思った。

 それがその日、唐突にノリが変わったと口にしてしまう原因になった。


「にしても夏休みも終わりかー もっと遊んどけば良かったぁ~」


「アンタは十分遊んでたじゃん。カレシと二泊三日て」


「その話一生擦られるのー? いいじゃん、高校で一番遊べる夏休みなんだから!」


「それで宿題放棄して駄弁ってるから世話ない。亜里沙を見習いな」


「そりゃ、亜里沙はできる子だから……亜里沙は今年やり残したことないの? 宿題以外で!」


 友人は無邪気に聞いてきたけど、彼女はすぐに思い付かなった。

 今年の夏休みは部活をしっかりやって、遊びと勉強も程々にやった。

 だから、やり残した感はそれほどないはずだったが……少々物足りない気持ちもあった。

 その時、彼女はふとスマホを見てしまう。


「なになに? 誰かから返事待ち?」


「それが亜里沙を惑わしてる奴?」


 それに対して彼女はすぐさま「違うよ」と返した。

 ただ、やり残しではないけれど、綺麗に終わっていない宿題が一つだけある。

 そう付け加えて言うと、友人達は意外そうな顔をした。

 今日を除けばあと一日しかないのに、彼女が宿題を終わらせていないのは大変珍しいからだ。

 しかし、彼女はそれが何か答えることなく、別の話に切り替えてしまった。

 彼女のLINEのトーク画面は、相談された時の相手側の既読で止まっていた。

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