8月18日(木)曇り 大倉くんとの夏休みⅡその2

 夏休み29日目。昨日の夜から今日にかけて清水先輩から連絡が来ることはなく、もちろん自宅に直接訪れることもなかった。それが成功を意味するのかはまだわからない。

 だけど、今はまだ僕が聞くべき時じゃないと思った。


 そんな中、今日の僕は大倉くんと共に外出していた。とはいっても明確な目的はなく、何となく暇で外をぶらぶらするだけだ。

 でも、普段なら1人でもやることにわざわざ大倉くんを誘ったのは、余計なことを考えないようにするためかもしれない。


「や、やっぱり年末が近づくにつれてやりたいゲームが詰まってくるなぁ」


 大倉くんは予約コーナーを見ながら言う。ぶらぶらして辿り着いたのは結局いつものゲームショップだった。


「大倉くんは予約してるやつとかあるの?」


「い、今はないけど、しておいた方がいいと思ってるのもあるよ。産賀くんは?」


「僕も予約はしてない。というか……ちょっとゲームする暇無くなるかも」


「えっ!? ど、どうして?」


「塾に通おうと思ってるんだ。本格的に行くのは夏休み明けだけど、この土曜日に説明会があって」


「そ、そうなんだ。ボクも……そろそろ考えた方がいいのかなぁ」


「なんて言いつつ僕も誘われなかったら行くと決めてなかったかも」


「で、でも、産賀くん自身が行きたいと思ったんでしょ? それはえらいと思う」


 大倉くんが素直に褒めてくれるので、僕は少しだけ恥ずかしくなる。ただ、先ほど言った通り路ちゃんの誘いが無ければ後回しにしていた可能性が高い。


「ぼ、ボクもゲームの予約なんかじゃなくて、他の予約を考えた方がいいのかも……」


「そんな深く考えなくても。そもそもせっかくゲームショップに来ているのにこんな話した僕が悪い」


「で、でも、言ってることは正しいから……」


「それに塾が始まったら始まったで睡眠時間を少し削ってゲームしちゃうかも。その時は大倉くんにまた夜更かしに付き合って貰わなくちゃ」


「それはもちろん! あっ……でも、それでボクも勉強しなくなったら大変なことに……」


「た、確かに。まぁ、塾に行き始めて良さそうだったら大倉くんにも共有するよ。親御さんの許可はいるだろうけど」


「あ、ありがとう。そのためには……まずボク自身のやる気スイッチ探さなきゃ」


 そんな風にこの日は大倉くんとゲームと勉強の話を行ったり来たりしていた。大倉くん的には悩ましい内容でもあったのだろうけど、僕は大倉くんと直接話せて少し落ち着けた気がする。

 

 高校で遊べる貴重な夏休みと言われた日数も折り返しはとっくに過ぎてしまった。

 そうなると、今度は自分のことで色々悩むことになる。悩みがちな僕はこの先どうなっていくんだろうか……そんなことを考えるくらいにはまだ落ち着けていないらしい。

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