7月10日(日)曇り 明莉との日常その56
また湿気が帰ってきた日曜日。母さんからこのような状態を戻り梅雨と言われることを聞かされて(母さんもニュースで聞いたらしい)、この世の中にはまだまだ知らない表現があるものだと思った。
そんな今日は昨日と同じくテストからの開放感を覚えながらゆっくり過ごしていたけれど、その中で半分くらい忘れていた話を明莉に告げられる。
「りょうちゃん。あかりの彼氏、今度の日曜日に来るから」
「ええっ!? ら、来週か……」
「テスト前に来る予定って言ったじゃん」
そう言われた時点では心構えできていたつもりだったけど、1週間以上経つとまた新鮮に感じてしまう。何なら僕はここで顔を見ることで明莉に彼氏ができたことようやく実感できるのだと思う。
「そ、そうだった。ところで明莉の彼氏さんはどういう人なんだ?」
「えっ。来週会うって言うのに今更聞くのそれ。会ってからのお楽しみで良くない?」
「楽しみよりも怖さがあるんだよ。じゃあ、せめて名前だけでも聞かせてよ。間違ったりしたら失礼だし」
「いいけど、りょうちゃんそんなにがっつり絡むつもりなの? ちょっと顔見せて挨拶するくらいだと思ってた」
「えっ? ご飯一緒に食べるとかじゃないの?」
「ううん。まぁ、お茶菓子くらいは出すだろうけど。あとは流れで決まる感じ」
僕は彼氏彼女が家族がいる時に家へ来ると言えば食事をするものだと勝手に思っていた。でも、その状況において兄弟姉妹が一緒にいる絵面は確かにあんまり思い浮かばない。たぶん演出上の問題なんだろうけど。
「それじゃあ、お待ちかねの名前の発表ですが、りょうちゃん的に予想はありますか?」
「ないよ。知っている人ならともかくまるで知らない人の名前は当てられない」
「しょうがないなぁ。桜庭くんだよ」
「へー、さくらば……えっ?」
「花の桜に、庭と書いて桜庭。あっ、名前は――」
「ちょ、ちょっと待って! その桜庭くん……お姉さんがいるとか言ってなかった?」
「えっ? 一人っ子って言ってた気がするけど……」
明莉は不思議そうな顔をする。一歩の僕はなぜだか少しホッとした。そもそも僕の知る桜庭先輩は西中出身なのだから、仮に弟がいても僕や明莉の南中へ通うわけがない。
「そんなに興味あるならりょーちゃんとも話す時間を作ってあげようか?」
「い、いや、わざわざいいよ。明莉の言う通りちょっと挨拶するだけでいい」
そんなこんなで苗字に少し動揺させられることもあったけど、再度心構えができた……いや、嘘だ。肝心の人物像が見えて来ないからまだ怖さの方が勝っている。絡みやすい必要はないけど、あまり怖そうな人じゃなければいいと、勝手に妄想を広げるのだった。
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