7月9日(土)曇り時々雨 夢想する岸本路子その9

 テストを駆け抜けた後の土曜日。そのご褒美というわけではないけど、今日は天気が崩れ無さそうなタイミングで少しお出かけをした。場所はいつも通りの本屋とゲームショップの流れだ。夏休みに読む本やプレイするゲームを検討しつつ、ウインドウショッピングを楽しんだ。


 そんな中、後半のゲームショップにやって来た時だ。


「あっ……路ちゃん」


「こ、こんにちは。良助くん」


 偶然にも路ちゃんと遭遇する。少し前の土曜日にもいたから前回ほどは驚かなかったけど、やっぱり場所的には本屋の方で会いそうなのにという驚きはある。


「今日も塾の時間まで暇つぶし?」


「うん」


「そっかぁ。テスト終わっても関係ないから大変だね」


「でも、自分で行くって決めたことだから……」


「偉い。すぐに気を緩めてる僕とは大違いだ」


「そんなことは……リフレッシュも必要だわ」


「そう言って貰えるとありがたい」


 僕はそう言いながらこの場をどう抜けるか考えてみるけど……上手い言葉が思い付かなかった。これはゲームショップに限らず、どこかで知り合いに会ってしまうと困ってしまうことだ。気にせず別れればいいんだろうけど、どうしても躊躇してしまう。

 すると、悩んでいる僕よりも路ちゃんの方が先に口を開く。


「あの……良かったら今日は良助くんの買い物を付いて見て回ってもいい?」


「えっ? ぼ、僕はゲームコーナーをぶらっと見るだけなんだけど……」


「それでもいいわ。も、もちろん、良助くんが迷惑でなければだけれど」


「そ、そう?」


 話を切り上げるどころか一緒に見て回る流れになって僕はまた驚く。いや、仮に路ちゃんが毎週暇つぶしでここに来ているなら、DVDレンタルの方は見飽きてしまったのかもしれない。それでゲームコーナーを見て回ろうにも人によっては慣れない場所に行きづらいこともあるだろう。


「良助くんは普段どんなゲームするの?」


「色々やってはいるけど、好きで選ぶのはRPGが多いかな」


「へー 今流行ってるRPGはこの中だと、どれになるの?」


「流行ってると言われると……意外と最近はRPGらしいRPGって少ない気がするんだ。まぁ、僕のRPG感に合わないだけで、ジャンル的にRPGに分類されているゲームはたくさんあるんだけどね


「わたしも出してるジャンルは全然変わっていないのだけれど、好きな作家さんの最近の作風が変わってしまったと思うことがあるから少しわかるかも。」


「あー 続編が出るとそういうこともあるよね」


「あっ、このゲーム少しだけ動画で見たことあるわ。マップが広い……的な」


「おお。色んな人がプレイしてたからなぁ。でも、実際評価が高いだけある面白さ何だよ。行けないところがないから没入感が凄くて……」


 それから20分ほど路ちゃんとゲームコーナーを見て回ったけど、路ちゃんが積極的に質問してくれるおかげで僕は非常に話しやすかった。それで気をよくしてしまったのか、恐らくその間は僕が喋っている時間の方が多かった。


「良助くん。そろそろわたし行くね」


「ああ、そうだよね。えっと……なんかごめん。がっつり話しちゃって……」


「ううん。楽しそうに話しているの見て、わたしも楽しかった」


「そ、そんなに楽しそうでしたか」


「うん。わたしも今度までにもう少し勉強しておくね」


 路ちゃんは少しからかい気味に言いながらゲームショップを後にした。ただ、指摘された通り話している間の僕は相当楽しんでいたと思う。好きなことを興味あり気に聞いて貰えるのはこちらとしても嬉しいものだ。


 今度は路ちゃんにそういう気持ちになって貰えるように、僕もゲームばかりせず読書もやっていこうと思った。

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