7月1日(金)晴れ 松永浩太との歓談その3
7月の始まりと一週間終わりの金曜日。週末にかけて台風が上陸することからその後は少し涼しくなるらしいけど、その前に僕としてはテストと台風が被るのはあまり良い感じがしない。
「あーあ。台風でテスト延期とかならないかなー」
一方、松永は僕と考え方が違うようで、そんなことを言い出す。今週は部活動が停止されていたけど、帰りが一緒になるのは金曜が初めてだった。
「延期になっても困るだけだろ。どうせやらなきゃいけないんだし」
「でも、仮に台風で休校になったらその日はテスト勉強できるからお得じゃん?」
「その場合松永はテスト勉強するの?」
「しないね。本来はテストを受けてる日なんだから」
松永は開き直るようにはっきりと言う。
「いや、さすがにちょっとはするでしょ……」
「りょーちゃんは俺がそんな小心者に見えるか!?」
「そんなところで漢気とか見せなくていいから。伊月さんが悲しむよ」
「うわっ……最近のりょーちゃん、そのカード使ってくるの卑怯だわ」
「そりゃあ、完全メタカードなんだから使うよ。実際、伊月さんから上手く誘導してくださいって言われてるし」
「先輩が後輩に良いように使われてる」
「い、いや、そんなことはない……たぶん」
今のは少し痛かった。メタカードであることは間違いないけど、完全は言い過ぎたようだ。
「話は戻るけど、マジで台風どうなるんだろ? 今までの台風でテスト延期になったことはないよね?」
「松永が覚えてないならたぶんそうじゃないかな? 何となくだけど、台風は夏真っ盛りよりも夏の終わり頃の方が激しい気がするし」
「この辺で一番ヤバかったのは20年以上前ってお袋から聞いたなぁ。その時、橋が流れたとか」
「へぇー そのレベルになると最早テストうんぬんどころじゃないし、色んな被害を考えたらやっぱり台風は来ない方がいいよ」
「それはもちろん……だけど! 休校に期待したい気持ちはあるじゃん?」
「……まぁ、無いと言えば嘘になる」
「まぁ、だから程々に外へ出られないような感じでお願いするしかない!」
「だからって、明日と明後日何もしないのは無しだぞ」
「わかってるって。りょーちゃんが心配しなくても……茉奈ちゃんが何か言ってくるだろうから」
そう言った松永は苦笑しているように見えた。それを惚気と取るべきか、ちょっとげんなりしていると取るべきか……いや、そもそもテスト勉強しない松永が悪かった。
そんなこんなで今日の帰り道もテストに役立つ会話はまるで無かったけど、松永と一緒に帰る時らしい内容になった。なんだかんだ松永と2人でいる時が一番平和な気がする。
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