5月18日(水)晴れ 夢想する岸本路子その3
テスト直前の水曜日。今回のテストも相変わらず不安なのはコミュ英語(2年生からはⅡ)で、日にちとしては金曜日に待ち構えている。
でも、一旦土日休みが挟まれるタイプのテスト期間だから勉強する科目を小分けにできるのはありがたい。
そんな今日も授業の方は滞りなく進んで、気付けば放課後。帰り支度しているところに路ちゃんが話しかけてくた。
「良助くん、昨日グループで部室を使う話が出ていたけれど……」
「あー……うん。1年生の子に再度確認しておこうと思って送ったんだけど、みんな使わないって言ってたから余計なことしちゃった」
実際は桐山くんの願望に乗ってあげた形だったけど、それをそのまま伝えるわけにもいかないので、適当にそう言っておいた。
それを聞いた路ちゃんは安心した表情になる。
「そういうことだったんだ。もし使うことになってたら良助くんに任せなきゃいけないところだったわ」
「それは別に構わなかったよ。勉強会の約束の方が先だったし」
「ううん。今日はそっちじゃなくて塾があるの。普段は19時開始なのだけれど、今週はテスト前で早めに教室を開けて先生に質問できる時間を設けてくれてて」
「あっ、今日はその日か。えっと……月曜日と水曜日、土曜日の午前中だったっけ?」
そう確認すると路ちゃんは頷く。
GW前に聞いていた通り、路ちゃんは今月から塾に通い始めていた。文芸部の固定日とは被っていなくて、開始時間も部活終わりになっている。
でも、部長か副部長のどちらかがいた方がいい時に備えて、副部長の僕には行く曜日を教えてくれていた。
「それなら尚更余計な心配かけちゃったな……ごめん、路ちゃん」
「ううん。わたしが気にし過ぎなだけだから」
「それじゃあ、今から塾で……通常の講義もある感じ?」
「うん。そこではテスト対策をやるらしいわ。だから今日は4時間弱は塾にいることに……」
「結構大変だぁ……って、ごめん。話し続けちゃって。僕は普通に自宅の勉強にはなるけど、お互いがんばろう」
「ありがとう。また、明日……良助くん」
そう言って塾へ向かう路ちゃんを見てから僕は心の中で気合いを入れ直す。
話によれば同じ高校の生徒も結構通っているようで、路ちゃんと同じように今日がっつり勉強して明日以降のテストに挑むことになる。
一方の僕は通信講座も取っていないから自分で勉強していくしかない。
そうなると、恐らく勉強の質では塾や通信講座をしている人には劣ってしまうので、何かした方がいいんじゃないかと焦ってしまう気持ちが少しある。
流されてやるものじゃないのかもしれないけど、今回のテスト結果にかかわらず、別の勉強手段を増やした方がいいかもしれない。
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