3月18日(金)雨 印象に残る宣伝とは
少しだけ気温が下がった金曜日。本日の部活の前半では冊子に載せた小説についての感想会が行われた。僕の作品は今日選出されなかったけど、やっぱり他の人から出る感想は自分にはない観点があって面白いし、勉強になる。
そして、部活の後半では森本先輩や岸本さんと共に新入生を勧誘するための話し合いが始まった。
「これが去年のやつねー 二人は一応見たとは思うけど……見たよね?」
森本先輩がそう言いながら出したのはやや紙質が古くなったポスターとチラシだった。
でも、見た覚えがあるかと言われると……なぜかそれほど印象に残ってない。
「すみません。わたし、よく覚えてなくて……」
岸本さんも同じ感想だったようで、僕もそれに同意する。
すると、森本先輩は明らかにやってしまった顔をしていた。
「もしかして……今年度部員があんまり来なかったのってこれのせい?」
「いや、そんなことはない……と思います。他の部活のポスターも見たはずですけど、全然覚えてないですし」
「まー、そう言われたらあたしも覚えてないけど、もうちょいインパクトがある画にした方が良かったのかもねー」
その去年のポスターとチラシには本と栞が描かれていて、多少カラフルな色付けやデザインが施されていた。誰が見ても間違いなく文芸部とわかるから悪いわけではないと思う。
ただ、森本先輩も言うように、どこかで見たことがあるような正統派過ぎるポスターとチラシなので、印象に残りづらいのだろう。
「岸本ちゃん、何かアイデアはあるー?」
「わ、わたしですか!? えっと……活動風景を貼ってみるとか」
「……ウーブくん、どう思う?」
「うちの活動風景、基本座ってる写真になっちゃうから……」
「そ、そうだよね……」
「それではそう言うウーブくんの意見は?」
森本先輩が司会のように進めてくれるけど、急に振られてもパッと出てこない。前回のポスターとチラシも改善しなければならないほど悪いところはないから余計に。
「……イラストを増やしてみるとか。人物が描かれてた方が目に付きやすそうですし」
「ほー ちなみにウーブくん、絵は描けるのー?」
「上手くはないです」
「岸本ちゃんはー?」
「人に見せられるほどじゃないです……」
「そこなんだよねー 美術部へ依頼するのもなんか違う気もするしなー」
「去年のこの絵は誰が描いたんですか?」
「汐里だよー デザイン面はソフィアがやってくれたー あっ、あたしは……貼ったり、配ったりをがんばったー」
つまり、森本先輩は部長だったけど、制作には関わってなかったのだ。だとしたら、さっきポスターとチラシのせいにしかけたのは中々ひどい。
「まー 今日決めきる必要はないからちょっと考えといてー」
森本先輩がそう言いながらその場を離れて行った。
「うーん……印象に残るようにするのって難しいんだなぁ。たぶん、両方目にしたはずだけど、僕は部活の一覧から選んで見学に来た感じだったから」
「わたしもポスターやチラシじゃないところで文芸部があると知ったから……そう考えると、宣伝のせいというよりは今年興味があった人が少なかっただけなのかも」
「うん。でも、今の文芸部の雰囲気が伝えられたら、もっと人が来てくれそうな気がするから……来週までに考えておくよ」
「わたしも何か思いついたら産賀くんに共有する」
その日は結局、何も決まらなかったけど、岸本さんと僕は部長と副部長らしく動き始められている気がした。
でも、新入生が来るまで約2週間ほどしかないから早く考えなくては。
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