3月17日(木)晴れのち曇り 大山亜里沙の再誕その12

 大きな揺れがあった後の木曜日。僕の地域ではほとんど影響がなかったけど、朝のニュースがそれ一色になっていると、いざという時に備えておかなければと思う。


 そんな中、僕は通常通り登校して今日もテスト返却や授業をこなしていく。


「そういえばさ、春休み中はテストの補習あるのかな? うぶクンは何か知ってる?」


 大山さんから唐突にそう振られたのは、5時間目終わりの休み時間だった。その前では英語表現のテストが返却されたので、恐らくその流れでの話なのだろう。


「ううん。何も聞いてない」


「そっかー そもそもうぶクンはこれまで補習一回受けてないもんね」


「ありがたいことにそうだけど……大山さん、もしかしてさっきのテスト……」


「赤点じゃないよ? というか、全部の結果わかるまで探りを入れるのはナシでしょ」


 大山さんがそう言うので僕は「ごめん」と謝るけど、その話題を振られてしまったら探りを入れてしまっても仕方がないと思う。


「でも、なんで補習の話になったの?」


「いや、学期末で残りの日数も少ないからどうなるのかなって気になっただけ」


「確かに。一応は来週も木曜日までは授業あるし、昼休みや放課後に補習できそうだけど、仮に休みに食い込むのちょっと嫌だね」


「でしょでしょ? 言っても春休みって一週間ちょっとしかないし、遊びに行きたいなら補習なんて受けてられないよね」


 大山さんにそう言うと、僕は補習のことよりもあまり長くない春休みの方が気になってしまった。その期間の中で大山さんに何かおごるか、あるいはおごられる日を設定するのは申し訳ない気がする。


「大山さん、テストの結果は来週中にわかると思うけど、勝敗が付いたらすぐにおごるようにしない?」


 そこで僕は今回の勝負について春休み前に終わらせておくように仕向ける。その方がお互いにとって時間を有効活用できるはずだ。


「それでもいいよー ということは、うぶクンが勝った時のことも決めれたんだよね」


「……も、もちろん」


「アタシ、今回も結構自信あるから負けないよー!」


 僕は誤魔化したけど、大山さんが聞いてこなかったので何とか助かった。


 勝敗がどうなるかはわからないけど、正直、僕が買ってもミスドをおごって貰えばいいような気がしてきている。結局のところ、二人でお店に行って片方だけ買わないというのも何だかおかしな状況になってしまうから、場所を合わせればウィンウインになるはずだ。


 ただ、本当にそれでいいかと言われると……こういう時に迷ってばかりだからしっかり決めた方が良いとも思ってしまう。

 自分が好きなものを言うだけなのに、こんなにも迷ってしまうところは来年度も治りそうにない。

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