3月5日(土)曇り時々晴れ 清水夢愛の願望その8
昼間の気温は過ごしやすくなってきた土曜日。明莉のテストは今週中に終わって今日は部活に行っているので、僕は一人でテスト勉強しなければならない。
それならば先週使った一緒にテスト勉強系の動画でも流そうかと思ったけど、同じ手段を何回も使うと飽きが来てしまうので、今日は別の手段を使うことにした。
その手段とは久しぶりの地元の図書館である。特に理由があったわけじゃないけど、ここ最近は足を運ぶ機会がめっきり減っていたから、空気としても新鮮な感じがしてちょうど良いと思ったのだ。
ただ、このテスト勉強の時期にここへ来ると桜庭先輩と出会ってしまう可能性がある。いや、それで何か不都合なことがあるわけじゃないけど、桜庭先輩との会話は僕からすると少し体力を使うので、テスト勉強前には遠慮したかった。
しかし、この日の図書館で会ったのはこの場所で会うのは久しぶりの人物だった。
「おお、良助じゃないか」
桜庭先輩の時と同じく休憩するために自販機へ行くと、清水先輩が座っていた。
「お疲れ様です。もしかして、清水先輩がテスト勉強ですか?」
「むっ。その言い方だと私がテスト勉強してるのが珍しいように聞こえるんだが」
「す、すみません。テストの時期にここで会うのは桜庭先輩だったので……」
「ああ。小織も時々ここへ来るらしいな」
「今日は桜庭先輩も一緒に?」
「いや、一人で来てるよ」
清水先輩がそう答えたので、今度は心の中で珍しいと思った。てっきり桜庭先輩が連れて来たからいるものだと予想していた。
「……さて、そろそろ戻るか。良助もしっかりがんばるんだぞ」
「はい。失礼します」
僕の挨拶に手を振った清水先輩は先に図書館の方へ戻って行く。
それを見送った僕は……何故だか凄く違和感を覚えた。今回も偶然会ったけど、清水先輩にしては別れるまでの過程があっさりとしているからだ。
テスト勉強に来ていることを考えれば、長く喋らないで勉強に戻るのは正しいし、今の清水先輩が集中できていると言われれば納得はできる。
でも、いつもの清水先輩と比べてしまうと、今日の態度がおかしく感じてしまった。
先週、清水先輩が言わなかった何らかの悩みが解決したのかまだわかっていない。
わざわざ僕から聞くことでもないのかもしれないけど、もしも今日の違和感にそれが関わっているなら……もう一度聞いてみてもいいかもしれない。
だけど、この日はお互いのテストのためにその後は話すことなく勉強へ集中することにした。
聞くとすればテスト終わりにしっかり面と向かって聞こう。
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