11月17日(水)晴れ 三人だけの昼食

 流れのまま水曜日。授業を終えて昼休みになると、僕はいつも通り昼食を取るために松永の席へ集まる。こうやっていつメンで集まって食べることが当たり前になってからそれなりの時間が経った。それでも集まれば話題が尽きることはなく、毎日楽しく喋りながらお昼を楽しんでいる。


 しかし、そんな集まりの中で今日はいつもと違うところがあった。


「悪い、みんな。今日はちょっと……」


「……あー、なるほど。了解了解」


 一旦、僕らのところへ顔を見せた本田くんはそのまま弁当を持って教室から出て行く。松永だけが先にわかったように言っていたけど、僕と大倉くんも少し遅れてそれが意味することに気付いた。


「も、もしかして……二人で食べる感じなのかな?」


「もしかしてじゃなくて、そうだと思う。いやー 校内で付き合うとそういうこともできちゃうんだねぇ。うらやましい!」


「で、でも、二人が付き合ってるのがバレちゃうんじゃないかな……?」


「まー、別に隠す必要はないしいいんじゃない? それにここだけの話だけど、女子間では結構広まってらしい」


 なぜ松永が女子間の話を知っているのかと思ったけど、確かに栗原さんも月曜に知っているような言い方をしていた。その後に詳しく話したわけじゃないから真相はわかっていないけど、松永が言う通りなら広まりつつあるのだろう。


「ちなみに俺は言ってないからね。ぽんちゃんから特に口封じされてるわけじゃないけど」


「ぼ、ボクも他の人には言ってないけど……じゃあ、どうして広まったんだろう?」


「そりゃあ、一緒に帰ったところ見られたとか……大山ちゃんが意外と公表してるとか?」


「二人とも。あんまり話してるとこれが広がる種になるから」


 僕がそう注意すると、二人とも口を隠す仕草をする。口外してはいけないと言われていないから僕も止める必要はないのだろうけど、ひそひそ話をされて本田くんや大山さんが良い気分になることはないと思う。そういうのを楽しむなら他に誰も聞こえてないところでやるべきだ。


「こ、これからは二人で食べるのがデフォルトになるのかな……」


「なに、クラさんちょっと寂しいの?」


「それは……うん。ちょっと思う」


「クラさん……! 心配ないよ、俺とりょーちゃんはずっと一緒だから!」


「あ、ありがとう。でも、松永くんは絶対だけど、産賀くんはワンチャン……」


「えっ!? そうなの、りょーちゃん!? りょーちゃんのそういう話あるの聞いてないんだけど!?」


「どういう盛り上がり方してるんだ。別にそういう話ないから松永も心配しなくていいぞ」


「いやぁ、いい友達を持ったなー」


 そんなことを言っている松永はちゃっかり彼女がいるのだから勝者故の余裕であるようにも聞こえる。いや、彼女がいることが勝者になると僕は思わない。思わないけど、一般的にはそうなるものだからそんな風に聞こえてしまう自分もいる。


 そして、大倉くんに便乗はしなかったけど、三人で終えた昼食は何だか物足りないというか、妙な感覚に僕もなってしまった。

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