11月16日(火)晴れのち曇り 岸本路子との親交その14

 恒例の部活日。この日はすっかり忘れていた件について森本先輩から報告があった。


「えー 各々が忙しくて流れ続けている文化祭の打ち上げですが、今月やるのもなんか違うなーって感じがしてきたので、年末の忘年会的なやつと合わせて12月にやることにしまーす。あっ、クリスマスとかにはしないのでご心配なくー」


 文化祭終わりに打ち上げの話は出ていたけど、その後音沙汰がなかった。僕は特に忙しかった記憶はないけど、先輩方はそうではなかったようだ。僕としては一緒になった方がお小遣い的な意味で助かる。


 それから勉強会を終えた後、いつもの自由時間に突入する。


「わたし、打ち上げのこと全然知らなかった……」


「あー……本当に文化祭終わった直後に言ってた話だから……」


「あっ……ごめんなさい。わたし、あの時は話を聞く余裕がなくて……で、でも、もう終わった話だから大丈夫!」


 岸本さんは自分を鼓舞するように言う。完全に忘れることは無理だろうけど、岸本さんの中で折り合いは付けられているみたいだから僕が変に気を遣う必要はなかった。


「それにしても文化祭からもう1ヶ月経って、今年はあと1ヶ月半しかないって思うと、1年って早いよね」


「本当にそう思うわ。たぶん高校生活もあっという間に過ぎて行くから……もっと色々やった方がいいんだろうけれど……」


「そう簡単にはいかないよね。今日も先輩方のおすすめ本を紹介して貰ったけど、他にやりたい事があってなかなか読めてないし。岸本さんは最近も1ヶ月に何冊か読んでるの?」


「一応、5冊前後は読んでいるのだけど……そのうちの何冊かは読んだことがある本なの。わたしだけかもしれないのだけど、新しい本に手を出すのは何だか体力がいるから最近はできなくて」


「わかるわかる。本じゃなくても定番を見たり聞いたりしたい時ってあるよね」


「良かった……でも、忙しいのを理由にある程度読むのを楽している部分もあるから改善しないといけないと思うわ」


 僕は先に共感してしまったけど、向上心のある岸本さんと同じにしては悪いと思った。僕は特に忙しいわけでもなく、単に他のエンタメ方向からの誘惑に負けているだけだからだ。少しは時間を作って文芸部らしく本を読んだ方がいいのかもしれない。


 そんな和やかな会話を続けているうちに下校時刻になっていた。何となく最近は部活内でも慌しい空気があった気がする(たぶん清水先輩が来たせいだ)から、ここの文芸部らしい空気で過ごす日は改めていいものだと思った。

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