10月2日(土)晴れ 大倉伴憲との日常その8

 通常通りの土曜日。この日は恒例となった大倉くんと通話しながらゲームする日だ。その中の雑談の話題はやはり一週間後に迫った文化祭の話題が中心になっていく。


『う、産賀くんは当日結構忙しい感じ……?』


「うーん、どうなんだろう。文芸部は完成したものを展示して見て貰う感じだから頻繁に案内する必要はなさそだし、質問に答えるくらいだと思ってる」


 直近に迫っているのに我ながらふんわりした回答だ。でも、それくらい準備も緩く楽しくやっているからそれほど忙しくなる感じはしていなかった。


『そ、そうなんだ。ボク……当日誰と見て回ろうかと思ってて。たぶん松永くんは彼女さんと行きそうだし、本田くんは部活仲間がいるだろうし……』


「あー、そうか。僕のシフトがわかったら知らせるよ」


『い、いいの?』


「暇な時に見て回るつもりだったけど、誰と行くとは決めてなかったから」


『よ、良かったぁ……あっ、ボクは土曜日だけ行くから日曜日は遠慮なく他の人と行ってね』


 電話口でわかるほど大倉くんは安心したようだ。元々、いつもの4人で見て回るものと思っていたけど、よく考えれば文化部以外はわざわざ両日参加しないパターンもあるし、外部の人と一緒に来る可能性もあった。


「そこまで頭が回ってなかった。文化祭デートかぁ」


『さ、さっきはああ言ったけど、実際にやるものなのかな? 松永くんは……』


「やりそう?」


『ボクもそう思う』


「ははっ。まぁ、先週は彼女の運動会見に行ってたくらいだから、文化祭も呼んでそうだなぁ」


『い、今まであんまり言ってこなかったけど、松永くんってめちゃくちゃリア充……?』


「違いない。い、いや、僕たちだってリアルは充実してると思ってるけど」


『そ、そうだよね! 運動会に文化祭デートなんて全然羨ましく……』


「あっ、大倉くん! そこ、敵来てる!」


『ええっ!? あっ、ごめーん!!!』


 珍しくゲームでミスする大倉くんを見ると、さっきのは半分くらいは強がりかもしれない。


 同じ立場で……と勝手に思うのは申し訳ないけど、大倉くんが今の立ち位置にいてくれるのは少し安心する僕だった。

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