9月10日(金)曇り 岸本路子との親交その2

 部活がある金曜日。部室へ入るや否や森本先輩が部活対抗リレーに対する愚痴を言ってきたので、僕は少しだけその場で足止めを喰らう。ソフィア先輩と水原先輩はそこそこ走れるようだけど、森本先輩は体育全般が憎いタイプらしい。そこについては同意してしまうけど、あまり同調し過ぎても良くない気がしたので、そこそこにがんばりましょうと言って話を終えた。


「産賀くん、お疲れ様」


 岸本さんがそう声をかけてくれたので、僕は挨拶を返してから岸本さんの傍に座る。火曜日はリレーについての作戦会議があったので、岸本さんと話す時間はほとんどなかった。


「岸本さんは体育祭の種目……って、これは他のクラスの人に言わない方がいいのか」


「別チームならそうかもしれないけれど、1組と4組は同じチームだったと思うから……」


「えっ? そうなの?」


「月曜日の練習でそう言ってたわ」


「知らなかった……」


 話題を振ったくせに体育祭への関心が全くないのは、我ながらいかがなものかと思う。確か3チームに分かれていたけど、1組から3組と4組から6組で分けて順番にチームを組んでいたのか。


「わたしは玉入れに出ることになったわ。それだけしか出ないのだけど……」


「僕もクラスだとムカデ競争だけだから同じだよ。運動系ではあんまり戦力にならないから」


「わたしも……でも、そうだとしたら部活対抗リレーに出て貰うのは何だか申し訳ないわ」


「いやいや。恐らくそんな真剣勝負じゃないから大丈夫だよ。一応、文化部対抗だし」


「それでも……産賀くんが出るなら1年のわたしも……」


「岸本さん、しっー」


 僕は思わず岸本さんの言葉を止めて、森本先輩の方を一瞬見てしまう。それを聞かれてしまったら本当に岸本さんが走らされてしまい兼ねない。


「任せといてとまでは言えないけど、全然気にしなくていいから」


「う、うん。ありがとう」


「それより、岸本さんが体育祭そんなに楽しみでない派なら話せることが色々ある」


「それは……雨が降って中止になればいいとか?」


「そうそう! 降ったら降ったで面倒だけど……」


 その後、岸本さんと体育祭に関するネガティブな方面で盛り上がった。別に体育祭アンチというわけじゃないけど、みんながみんな楽しいものではないのだ。特に運動系が得意じゃなければ……気付いたら森本先輩と同じことを言っている気がする。

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