7月24日(土)晴れ 明莉との夏休み

 夏休み4日目。この日の朝、(僕の知らないうちに)プールへ行く日程が来週の水曜日に決定した。そうなると、水着を用意しなければいけないから特に予定のなかった僕は一番近い衣料品店へ行って適当な水着を購入した。


「りょうちゃん、おかえりー どこ行ってたの?」


 帰宅すると、僕が出かける前はまだ寝ていた明莉が居間でくつろいでいた。


「ちょっと水着を買いに……」


「えっ!? りょうちゃん、海行くの!?」


「いや、海じゃなくてプール。というか、先にプールの方が出てくると思うんだけど」


「大は小を兼ねるって言うじゃん? それで、どんな水着買ったの?」


「えっ? 見るの?」


「だって、りょうちゃんとプールや海に行くことないでしょ」


 それはそれで悲し……くはない。冷静に考えて妹とプールや海へ行く年齢じゃなかった。口に出した間違いなく引かれていた。


 僕は「買ったのはこれだよ」と言いながら水着を取り出した。それを10秒ほど見つめた明莉の顔は何故かどんどんと真顔になっていく。


「へー…………普通」


「ふ、普通だと悪いの?」


「なんていうか、色味が学校の水着とあんまり変わってないというか……」


 確かに僕が買ってきた水着は黒に近い紺色のルーズタイプで、無難と言えば無難だった。でも、今回のプールはあくまで付き添い的な立ち位置で行くからこれくらいがちょうどいい……というのは言い訳で他の色味はあまり考えなかった。


「逆にどういうのだといいの?」


「うーん……もうちょいビビットなカラーとか?」


「ビビットって……僕に似合うと思う?」


「りょうちゃんのイメージじゃないかも」


「でしょ? ……自分で言ってちょっと悲しくなった」


「でも、逆にイメージないやつにすることで、意外性がアップするんじゃない?」


 明莉は僕をどうしたいのだろうか。まぁ、ファッションセンスでいえば明莉の方が圧倒的に上だから僕にはピンとこなくても正しいことを言ってる可能性はある。


「……行く前にアドバイス貰えば良かった」


「ということは……りょうちゃんにとって勝負の夏なの!?」


「違う。そういう話は勘弁して……」


 そうは言いつつも今回のプールは女子も参加するから本当にちょっとだけ後悔していた。いや、別にモテたいというわけじゃなく、これでダサいとか思われたら僕もそれなりに凹むと思ったからだ。改めて買い直すお金もないからこれで行くしかないけど……ビビットカラーだったかぁ。

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