7月18日(日)曇り 明莉との日常その15

 夏休み直前の日曜日。僕は金曜日に大山さんから得たケーキ屋情報を明莉に共有することにした。恐らく教えるとおごらされることになるだろうけど、久しくおごっていない気がするからそれもまた良しとしよう……そう思っていた。


「明莉、うちの高校の近くに新しいケーキ屋できたの知ってる?」


「知ってるよー 結構美味しいらしい……ってりょうちゃんが何でそんな情報を!?」


「な、なんでって、聞いたんだよ……女子の友達から」


「ええっ!? それってどっち? 写真見せた方? 部活で一緒の方?」


 明莉が喰いついたのは情報源の方だった。僕だって新しくできた店の情報くらい拾ってもおかしくないと思うけど、明莉からすると僕がケーキ屋の情報を得ていることは珍しいみたいだ。


「そこは気にしなくても……」


「だって、りょうちゃんが変に隠すんだもん」


「写真見せた方だよ。同じクラスの」


「へ~ その人なんて名前なの?」


「名前まで聞くのか……」


「いいじゃん、そっちはあかりのフルネーム知ってるんでしょ。まっちゃんが言いふらしてるから」


「う、うん。そうだな」


 本当は僕が口走っているんだけど、ここは松永を盾に使わせて貰っている。別にやましいことをしているわけじゃないのに。


「その子は大山亜里沙っていう名前」


「ほー 大山先輩かー」


「明莉にとってはそういう呼び方になるか」


「まー、まっちゃんは例外だからね。それで、りょうちゃんは夏休みに大山先輩と遊んだりするの?」


「特にその予定は……できるかもしれない」


「えー!? なになに!? どこ行くの!?」


 しまった。素直に考えて答えるんじゃなかった。できるかもしれない予定は大山さんは主体だとしても僕はおまけで付いて行くだけだから、普通に遊ぶって話とは違う。


「できるかもしれないだけだから」


「そんな謙遜しなくてもいいのに。いやーりょうちゃんもやるようになったんだなー」


「明莉。言っておくけど、僕と大山さんは明莉が想像している感じじゃない。普通に話している仲だ」


「あかりが想像してるって?」


「それはその……実はそういう噂が一瞬だけ上がったことがあって……」


「あー……」


 それ以上言わなくても明莉は察してくれたようだった。それに加えて僕は他人の恋に片足を突っ込んで、普段の話している関係が終わりそうだったなんて言えるはずもない。


「結構面倒くさいよね、男子と女子のそういうやつ」


「ま、まぁ、僕は周りに直接言われたわけじゃないからまだ良かった方だと思う」


「そういう話題なんて一瞬だし、りょうちゃんも気にせず夏休みは遊んでいいと思うよ?」


「まだ行くと決まったわけじゃないけど……そうする」


「……で、もう一人の子は?」


「……へ?」


「部活で一緒の子はどうなの? どんな感じ? 名前は?」


 怒涛の質問に、こういう興味が噂を生み出すんじゃないかと思ってしまった。中2の時ならそういう話題で盛り上がり始める時期だろうし……僕はなかったけど。

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