5月5日(水)雨 電話は楽しい
連休最終日。始まった時は長いと思った休みもあっという間に終わってしまった。宿題は滞りなく終わったので今日も大きな予定はなく、最後の休みをゆったりと過ごすことになりそうだ。
そう思っていた午前10時頃、僕のLINEに1件の通知が入る。その相手はなんと大山さんだった。LINEの交換は宿泊研修の時、スマホで取って貰った写真を渡す時にしていたけど、それ以降はLINE上でやり取りしていなかった。
そして、その通知内容は「電話かけていい?」というメッセージだった。既読を付けてしまったので、早く返事をしなければいけないのだが、何故電話されるのか皆目見当もつかないので、変にドキドキしてしまう。
5分ほど考えた末、僕は「OK」と返事をした。すると、既読がすぐに付いて電話がかかってくる。
『もし~ 突然ごめんねー』
「ううん。大丈夫」
『あの後、カラオケどうだった?』
「えっ? ああ、うん。楽しかったよ」
『そっかそっかー 今度は一緒に行けたらいいね』
一緒はちょっと都合が悪いと思ったけど、とりあえず「うん」と返事をしておく。ただ、唐突にこの前のカラオケの話がしたかったわけじゃないだろうから、これは前振りなのだろう。
『それでさー 相談があるんだけど』
「僕に?」
『そそ。うぶクンしか頼れない相談』
「僕しか?」
『それがね、アタシ……』
「う、うん……」
『……古典の授業も寝てたの』
「……はい?」
『いや~ だから古典のノートも写させてくれないかなーなんて』
とぼけるような感じで大山さんは言った。まぁ、僕しか頼れないと言われた時点で何となくそういうお願いだと思っていた。
「構わないけど、どうして今?」
『古典の宿題やろうとしたらちょいちょいノート取ってないことに気付いてさー マジ焦った』
「宿題はちゃんとやってるんだ」
『うぶクンひどくない? そこはしっかりやるから!』
普段の授業と宿題をやることのどっちがしっかりしているかと言われると、どっちもしっかりすべきだ。更に言えば今日は連休最終日なのでかなりギリギリの作業を……と思ったけど、大山さんのやる気をなくてはいけないから黙っておこう。
「わかった。電話終わったら写真撮って送るよ」
『ホントいつもありがとー! 今度なんかお礼するね☆』
「別にいいよ。でも……どうして僕に頼むの?」
『うぶクンが綺麗にノート取ってるから! 現社もチラッと見た時に綺麗そうだから頼んだし』
「ああ、なるほど……」
『もしかして……迷惑だったり?』
それは僕からすれば、意外な質問だった。今まで遠慮なしに頼んだいたからそういうことは考えないものと思っていたから。
「全然、迷惑じゃないよ。ただ、それだけ寝てるとちょっと心配だと思って。先生たち意外と見てるし」
『……そっか。なら良かった』
「いや、良くないよ。次からはちゃんと授業を――」
『えー!? 電話で説教とかヤダー! それよりさ、GW中は他になにしてた?』
「えっ? 家族でスイーツバイキング……って、ノートと宿題は!?」
『スイーツバイキング!? それ気になるんですケド!』
それから20分ほど世間話をしてしまったので、本題のノート写しを一瞬忘れそうになった。別に電話で話す内容でもないと思ったけど……意外と楽しかったからよしとしよう。
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