第4話【マオウ アラワル】

 突然ですが、魔王が来ました。


 「ハッハッハ!ユウシャよ、吾輩が来た!!」


 パン屋のボロ部屋が、ボロボロと崩れる。砂埃に少し咳き込んだ。


 ゲボ ゴホ


 俺は思うのだが、ラスボスがこんな序盤に出てきていいのだろうか?いや、討伐する側としては好都合なのだが。


 ・・・・・・しかし武器が【ヒノキノボウ】ではなぁ。


 「要件」


 結局、何しに来たんだろうこいつ。


 「フッフッフッ、聞いておののけ哀れなユウシャよ!吾輩はなーーー」


 マントを大きく広げ、何やらカッコいいポーズをとっている。汚れますよ、魔王さん。


 「・・・・・・ずっと座ってるだけならお使いでもしてこい、と部下たちに言われて朝食用のパンを買いに来たのだ」


 魔王は凛々しい笑みに、一滴の涙をこぼした。


 うぅ ううぅ


 いや、一滴におさめたのだ。威厳もなにもかもを見失っても、プライドだけは棄てまいと努力しているのだ。見てて辛い。


 「これ」


 取り敢えず、カーペットが汚れるのでハンカチを渡そう。

 【ハナガラハンカチ】−1


 「・・・・・・ありがとうユウシャ、お前はいいやつだよ」


 ズビィ


 こいつ人のハンカチで鼻かみやがった。やっぱり魔王は殺す。


 「すまない、このカリは後で返そう。明日までにでも洗濯して持ってくる」


 ただ借りるだけやん、ユウシャと魔王の会話とは思えないよ。


 「じゃ、また。次はーーーハンカチを返すときだろうから、次の次は敵として会おう」


 コクリ


 マオウ ハ キカン シタ


 ・・・・・・結局あいつ何だったの?


 まあ、いっか。朝食たべよー。


 ツクエ ヲ シラベル ?

 〉yes

  no


 パンの代金(+5G)

 深淵の羽 (レア) ヲ テニイレタ


 なるほど、ついに我が家にも金を産む鶏が来たか。こんどあったら羽でもむしろう、ハンカチを汚されたのだからしかたあるまい。私もそうしなければ餓え死にをする身体なのだ。

 さてと、では『いただきます』。


 「・・・・・・」


 10Gと一緒にもらえる【ヒノキノボウ】が全くの空気なのだが、どうすればいい?

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