10Gと一緒にもらえる【ヒノキノボウ】が呪いのアイテムだったのだが、どうすればいい?

坂本尊花

第1話【ユウシャ ニ ナッタ】

 ある日、王様に呼び出された。


 「この金とこの枝で魔王を倒してこい」


 無茶振り過ぎやぁしませんか?


 「この世界の平穏は、お前の手に掛かっている!!」


 いや、つっても俺、確かにお決まりに転生はしたけどそれ10年前の話だし、そもそもチート能力とか貰ってないよ?


 「さあ、魔王を倒してくるのだ!拒否権は無い!!」


 ・・・・・・えぇ。


 ーーーさて、こうして俺は勇者になった。何気に街の人からの待遇も良くなった、特に衛兵。すれ違うとだいたい声を掛けられる。


 「魔王討伐がんばれよ!けど、絶対に死ぬなよ!!」


 死ぬなよ、というところだけ異常に熱がこもっていた。衛兵や街の人の顔には、どこか同情めいたものが浮かんでいる。

 ・・・・・・はっきりと言おう、貧乏クジ引かされただけじゃねぇかコノヤロウ!!??


 【コブ平原:推奨レベル5】


 取り敢えず、ここいらで一番弱いところに来た。言っとくが俺はレベル3である。


 グジャ、グッジャアァァ


 鳴き方が独特過ぎることで知られている、ベリーラビットが現れた。よし、住み込みのパン屋で鍛えたこのパワーを試す時だ!


 「えりゃ。」


 ベリーラビット ニ 4 ノ ダメージ

 残りHP26。


 グジャ


 ユウシャ ニ 14 ノ ダメージ

 残りHP1。


 うん、そりゃただのパン屋ですし。仕方ないですよね・・・・・・。


 戦略的撤退を行使する!!!


 【王都:パン屋】


 帰ってきた。したら、店長がフランスパン的な物をかじりながらカウンターの上に座っている。降りろやジジイ、不衛生極まりないぞ。


 「帰還したかユウシャよ、死んでしまうとは情けない」


 死んでねぇ。つか、開口一番それか。


 「回復薬一つ」


 俺は無言で1Gを置く。


 「はいよ、リトルポーション」


 パン屋に回復薬があることにツッコんではいけない、ここはそういう店なのだ。だいたい店主自体がかなりの変わり者で、パン屋のくせして毎日毎秒ずっと鎧を纏っている。夏場は臭いのせいか客足が激減して危うく飢えかけたこともあったぐらいだ。


 リトルポーション ヲ シヨウ

 HP15(1+《30)


 ふぅ、今日は疲れた。まだ日も高いがもう寝よう。


 ザザザザザ(某RPG風な移動音)


 【パン屋F2】


 ボロ階段の軋みが強くなっていた、崩れないか心配だ。というか、崩さないか心配だ。


 現在の所持金は9G、弁償なんてできやしない。


 ……決めた、ユウシャとしてまずは風魔法か土魔法を取ろう、そして修繕しよう。ユウシャが債務者とか国としても一大事だしな、というか俺の人生がいよいよ終わりそうだしな。そうと決まれば明日から修行ーーー


 バキッ


 ・・・・・・あっ。

 下にいる店長には、聞こえたか?聞こえてない??


 よし!なら良し!!さ、寝よ。きっと勇者になったのも夢だろうし、床割ったのも夢だろうから。


 布団にダイブ!硬い!痛い!!


 ZZzzz


 次の日。


 カイフク シマシタ

 HP15→(15)


 あの、すいません。一つ聞いてもよろしいでしょうか?


 「・・・・・・」


 10Gと一緒にもらえる【ヒノキノボウ】がとれないのだが、どうすればいい?

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