第7話 勇者クラス②

「キミがクラス落ちしてきたっていう男子か。私はセシリア。こっちがエメラインだ、よろしく」


 午後は今日も魔法の実技授業だが、ついに女子二人が現れた。

 って、どういうこと!?


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 名前 セシリア

 年齢 15歳

 レベル 12

 種族 人間

 職業 魔法使い見習い

 HP  123/123

 MP  123/123

 攻撃力 5

 防御力 31

 武器 -

 防具 学園服


 基礎パラメータ

  筋力 :96

  生命力:107

  知力 :147(+6)

  精神力:141(+6)

  敏捷性:109

  器用さ:112

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 この子もブラッドリーと同じレベル12で、魔法使い見習い。

 まさかもう一人も……。


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 名前 エメライン

 年齢 15歳

 レベル 12

 種族 人間

 職業 僧侶見習い

 HP  121/121

 MP  122/122

 攻撃力 5

 防御力 31

 武器 -

 防具 学園服


 基礎パラメータ

  筋力 :92

  生命力:106

  知力 :144(+6)

  精神力:146(+6)

  敏捷性:112

  器用さ:112

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 こっちの子もか。

 勇者クラス、いったいどうなってるんだ。


「エメラインでーす。ふつつかものですが、よろしくお願いしまーす」

 ピンク色の長い髪をした女子が、ゆっくりとした口調で挨拶をしてきた。


 ピンクの地毛か。

 コスプレとは違う、自然なピンク色に思わず見惚れてしまった。


「ちょっとキミ、エメラインに変な色目使わないでよね!」

 そう言うセシリアは、短い金髪が良く似合っている。

 どちらも幻想的な美少女だ。


「そ、そういうわけじゃ……」

 自分で言いながら、どういうわけか分からない。


「ふうん、まあいいけどさ。そんなことより、午後は魔法の実技だったわね。じゃあまず私から」


 セシリアは的に向かって手の平を向けると、魔法を使った。

「フレイムアロー」


 炎の矢が的へ飛んでいく。

 昨日見た魔法と同じだ。……いや、なんだか威力が弱い気がするな。


「はい、終わり。次エメライン」


「はーい、エメライン、いきまーす」

 エメラインはセシリアの時よりも的に近づいてから、手をかざした。


「フレイム、アロー」

 声に合わせて炎の矢が飛び出す。


 セシリアと同じく、Cクラスの生徒が使っていたフレイムアローより威力が弱い。

 というか、この子は僧侶見習いなのだが、なぜ攻撃魔法を?


「エメライン、終わりまーす」


「はい、ご苦労様。じゃあ、あとはキミ、よろしくね」

 セシリアはウインクをすると、近くのベンチに二人して座り込んだ。


 またもや、この二人も手抜きの訓練。

 同じ勇者クラスでも他のパーティは普通に訓練しているようなので、訳の分からないのはこのパーティメンバーだけ。

 レベルが高い分、こんな訓練なんて意味がないってことなのだろうか。


 あまり考えても仕方ない。彼女たちは彼女たち、俺は俺だ。

 まずは、なにもできない俺の状況をなんとかするのが先決だ。なんか負け犬みたいになってて気分が悪い。このまま終わってたまるか。


 周りの事は気にせず、俺は真面目に訓練することにした。


「な、なあ、二人は魔法を使えるみたいだけど、魔法ってどうやって習得するんだ?」

 恥を忍んで、思い切って聞いてみることにした。


「は? ごめん、ちょっと意味わかんない。魔法はもちろん魔法書を持って契約の魔法陣で習得するんだけど、いくらなんでもそんなこと聞いているわけないよね?」


「あ、えっと、いや、俺、魔法を使ったことなくて……」

 なるほど、魔法習得っていうのは、魔法陣で契約みたいなことするのか。


 セシリアは少し考える素振りをすると、

「さすがクラス落ちってことね。キミ、地方出身? たまに生活魔法も使えない地方出身の冒険者がいるんだよね」


「ま、まあ、かなり遠いところから来たんだ。周りに冒険者もいなかったし」

 ちなみに日本から来ました。


「へえ、それでよくここに入れたね。これでも王都セントグレスリー校は入学するのも難しいんだけどさ。で、何の魔法が使えるの?」


「使える魔法?」


「うん、魔法メニューで確認してみて」


「魔法メニュー?」

 そう言うと、突然、いつも見ているステータス画面とは違うものが、目の前に浮かび上がった。


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 無属性

  -

 火属性

  -

 水属性

  -

 風属性

  -

 地属性

  ブロック

 光属性

  -

 闇属性

  -

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 きた!!

 ステータス画面だけじゃなく、魔法の一覧も表示することができたのか!

 これが昨日から分かっていれば、もしかしたらこんなことにならなかったかもしれないな。


「地属性の『ブロック』が使えるみたいだ」


「なんだ、習得してんじゃん。じゃああとは、魔法の効果をイメージしながら魔法を唱えるだけだよ」


 効果のイメージか。

 魔法の説明も見られそうだ。


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 ブロック

  属性 地

  消費MP 12

  使用条件 レベル10以上

  効果

   パーティメンバー全員の防御力をアップさせる補助魔法。

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 ということは、防御力が上がることをイメージしながら――――


「ブロック!」


 一瞬、身体が光ったような気がしたが、とくに何か起きた感覚はない。

 もしかして防御力が上がっているのかもと、ステータスを確認してみたが変化した様子もない。

 俺は救いを求めるようにセシリアに視線を送った。


「そうか、キミ魔法使ったことないって言ってたね。ならスキルレベルが低いんでしょうから、まともに発動するわけないか」


「え? 魔法もスキルレベルがあるってこと?」


「なにそれ、そんなことも知らないの? まったく、スキル一覧に何があるかぐらい見ときなさいよ」


 今さらだが、なんとなくこの世界に慣れてきた。

 ステータスにせよ、魔法の一覧にせよ、どうも確認したいと思うだけで表示されるようだ。


 セシリアの言い方だと、スキルの一覧も同じだろう。

 俺はスキルを表示させた。


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 コモンスキル

 エクストラスキル

 ユニークスキル

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 コモン、エクストラ、ユニーク。スキルは三種類に分類されるってことだろうか。

 俺はさらにコモンスキルを表示させると、大量のスキル名が表れた。


 料理、清掃、洗濯、裁縫、耕作、釣り、狩猟、採掘、採取……。

 スキルとは、もっと戦闘向きなものを想像していたのだが、生活に必要なスキルもあるようだ。


 スキル名の横に付いている数字がスキルレベルだろうか。

 そうなると、俺のスキルはほとんどが1で、たまに3があるだけだ。4以上は見当たらない。


「どう? 地属性のスキルレベルはいくつだった?」

 セシリアが聞いてきた。


 そうだった。生活系のスキルなどどうでもよい。戦闘に関係あるスキルを探さないと。

 俺はスキル一覧をスクロールさせていった。かなりの数だ。これは慣れるまで目的のスキルを探すのが大変そうだ。


 生活系のような名前のスキルの次に、武器スキルっぽい名称が固まって表れた。

 レベルを見ると、棍だけが3。残りの剣や斧、槍など戦闘力の高そうなものは全て1だ。


 俺の適正武器は棍棒ってことか。


 正直ちょっとガッカリだが、剣が的に当たらない理由はこれで分かった。次の実技は棍で試してみよう。


 さらにスキル一覧をスクロールさせると、目的の属性スキルを見付けた。

 魔法のメニューで確認したように、無・火・水・風・地・光・闇の、7属性があるようで、俺のスキルレベルは無属性と地属性が3、あとは1だった。


「地属性のスキルレベルは3みたいだけど、それって低いのか?」


「3? やっぱそんなもんかぁ。3じゃ魔法が発動するのギリギリって感じよ。ちなみに私は、風属性が7、水属性が6ね」


 7!? そんなに違うのか!


 おかしい。俺は異世界転生者だ。

 そういうのって相当な才能があってもいいのだが、レベルは普通だし、スキルは大したことない。いや、むしろ低いようだ。


 入学式の時、俺はこの世界に希望を抱いていた。元の世界で出来なかったことを、ここで取り戻そうと思っていた。

 だが今は、希望が減ってきたどころか、不安が強くなってきた。


 この世界で、俺はやっていけるのだろうか。

 なんだか、自分の置かれている状況に腹が立ってきた。

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